想像力に火を付ける〜AI時代のリーダーの役割
【想像力減退の時代】
2019年、平成最後の年始をいかがお迎えでしょうか。
本日は昨今の日本、いやひょっとすると多くの先進国からなくなりつつある、「想像力」についてお話できればと思います。
テクノロジーの進化によりグローバル化が進み、以前と比較して人類は、知らない土地、知らない民族・生物、化学、技術、情報などいわゆる「未知の世界」がどんどん少なくなって来ている昨今ではないでしょうか?
ビジネスにおいても、高度な検索機能や、3Dプリンター、AIなどの進化により、リアルタイムで実物に近いプロトタイプや動画を確認出来たり、高度なシミュレーション機能などで、即座に答えが手に入る時代、ある種の「事足りる時代」と言えるのでしょう。
反面、想像力という人間が持つ非常に大切な能力は相対的に衰えているような気がします。
ヘンリー・フォード氏の有名な言葉がありますが、「もし、私が顧客に彼等の望むものを聞いていたら、彼等はもっと速い馬が欲しいと答えていただろう」これも、その時代の代表的な移動手段である、馬や馬車という目に見えるものから、想像して新たな移動手段である自動車への発想転換の困難さを表した言葉ですね。
フォードの時代ですらそうであったのですから、情報や物が溢れる2019年においては、この想像力を持つ事は更に困難と言えるのではないでしょうか?
ではこの想像力、一歩進んで創造力をどのようにして鍛えたら良いのでしょうか?
【敢えて情報を遮断する】
筆者が若い頃、今よりもっとラジオや本からの情報入手が多かった時代は、映像からの視覚情報がないため頭の中で想像する機会が多くありました。野球中継や相撲放送などのスポーツ、ニュースや歴史、化学、技術、物語などの文化等、耳や目からの限られた情報でイメージを膨らませる作業が必要でした。
昨今ツイッターの制限文字数以上の文章は集中して読めない若者が増えているようですが・・・。
事足りる状態から、敢えて何らかの情報を遮断することで、手に取れない、目に見えない事柄を意図的に作ることで、イメージする力を養うことは有効だと思います。
【視点を切り替える】
先ほどのフォードの例ですが、どう改良したいか?と問われれば、もっと早く、もっと快適に、もっと美しく、もっと安価でなど、誰でも思いつく改良点が数多出てくることは「想像」出来ますが、顧客は提供する側ほどその製品を日頃から真剣に考えていることはまずありません。
従って視点、考え方のアプローチの方法を変えてみる必要があると思います。
「もし自分が顧客だったら、今目の前にある製品をもっとどう改良したいか?」を考えて煮詰まる時は、「何を解決したいのか?」を先に問うてみる。
この方法の場合、質問力もさることながら、観察力を鍛えることが有効です。質問力は答えを持っている相手、想像力が充分にある相手には有効ですが、そうでない場合、鋭い質問が出来たとしても、会話は往々にして迷走します。
故に、顧客は何に困っているのか?どのような課題を解決したいのか?を観察によって考えることがその閉塞感を脱却するヒントに繋がります。(ご興味のある方は、ハーバードビジネススクールのクリステンセン教授のジョブ理論「Competing Against Luck」がとても参考になります)
【成功イメージを膨らませる】
想像力が弱い人や集団の多くは、初めから可能性を閉じてしまいがちです。分かり易い例で言えば、登場する以前に、プロ野球で更にはメジャーリーグで二刀流で大活躍する選手を、14歳で将棋デビューして15歳で7段に昇段するプロ棋士を、イメージした人がどれほどいたでしょうか?
おそらく今後は、二刀流を目指す野球選手、才能ある若手棋士は更に切磋琢磨し、常識を覆す人たちが多く登場することでしょう。
つまり、出来ないと思っていることが苦労なく自然に出来るようになることは稀で、可能性を初めから排除するのではなく、成功するイメージを強くもち、現実に達成出来たらどんな世界になるか?を想像する。
こんなことが出来たら世界中がびっくりするだろう、達成することを考えるとワクワクする、やってみたいと思うなど、眠っているポジティブな力を原動力に変え、「自分ゴト」への変換が必要です。
【これからのリーダーの役割】
想像力の鍛え方について、幾つか述べてきましたが、方法は本気で考えればその企業、集団、個人において相応しいやり方は沢山開発できると思います。
しかし、問題はどのようにそのきっかけを作るか?にあるものと思います。
言葉や行動、映像や様々な人の声などを駆使し、チームのメンバーが奮い立つよう、彼等の「想像力に火を付ける」これこそがこれからの時代のリーダーの役割だと筆者は考えます。
ダイバーシティ、アンコンシャス・バイアス、想像力に火をつけるなど各種トレーニングにご興味のある方は、講師派遣も可能です。ぜひ、お問合せください。
金杉リチャード康弘
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