ダイバースリーダーシップ推進協会 ブログ

ダイバーシティと多様性を強みに変える組織作りコンサルティング 育成のプロ集団、ダイバースリーダーシップ推進協会のブログです。

“情報が回れば、組織は活きる。情報マネジメント再考” 目詰まりのない組織 #7 ~ アフターコロナも輝く組織でいるために ~

【情報が回れば、組織は活きる】

 前号からだいぶ時間がたってのメルマガ発信となってしまいました。多くの企業様が徐々に日常の事業・業務推進体制へとシフト・モードチェンジが進んでおられるせいか、ワークスタイル変革とそれにともなうマネジメント改革のご相談が急増しています。

  • どの程度出社させるべきか?
  • リモートワークを前提とした場合のマネジメントルールはどうあるべきか?
  • 一体感をどう確保すべきか?そもそも一体感は必要なのか?

など、本格的・本質的検討が始まっています。

 

 今一度「私たちはどうありたいのか?」といったニューノーマルの世界における“自ら”の再定義へと検討が深まっているケースも増えています。

 そのご支援のために、メルマガの発信を滞らせてしまい申し訳ありません。今号より、ほぼ定期発信してまいりますので、改めてよろしくお願いいたします。

 

 さて、前号では、ビジネスの前提が大きく変わり、進むべきゴール・正解が分からない中で、組織を動かす中核機能として心臓=「心理的安全性」の重要性を、身体における「心臓」に例えて論じた。

 アフターコロナにおいては、その心理的安全性(=心臓)の重要性が更に増していることを取り上げ、それは何故か?どう高まるか?について解説した。

 

 これまでの結論提示型の強いリーダーは通用しなくなり、組織にとって有益となる多様な個を見つけ・引き出し、多様性を事業推進力へと活かし・輝かせることができるダイバースリーダーが求められている。

 進むべき道やゴールが見えない世界において、自らが中心となってあらゆる情報を集約・共有し、思考を協働して、チームとして情報に付加価値をつける。そのプロセス・背景で創造された“情報”が共感と合意を生み出し、組織がオーナーシップをもって活動する。

 

 率先垂範という言葉もあるが、これからのマネジメントは組織の中心として、基盤としての役割を担い、この情報のマネジメントをしっかり行っていくことがより重要になっていくとDLAは考えている。

 

 そこで、今号ではこの情報のマネジメントを、身体で言う「血管」として捉え、その血管が目詰まりを起こしていないか?「情報伝達の目詰まり」について考えたい。

 

血管の目詰まり=死】

 「血管の詰まりは死に直結する。」

 仮に最悪の結果は免れたとしても、なんらかの器官(機関)・機能にダメージが残ってしまうことが多い。

 

 情報伝達が正常であれば、人は脳の指示にもとづいて身体全体が協調し、リズムに合わせダンスを踊る事ができる。まさに脳と身体全体が融合している状態だ。

 会社組織にとっての理想も同じで、あらゆる組織が協調して事業という名のダンスを踊る際、目詰まりがあってその動きについてこられない部署(=器官))があった場合、そこから事業(=身体)が崩れて行く。

 

 プールから海への事業の場の転換の話でも触れたが、指先から足先まで、末端の感覚を捉えながら、常に体制と活動に補正を加える事で、意図した方向に体系的な動きをとれるよう調整する。これこそが情報のマネジメントである。

 

 今日、私たちが直面している情報マネジメントの難しさは、扱う情報の種類が指数関数的に増え、且つ不確実性が高まっていること。にもかかわらず、意思決定の検証プロセスを高スピードで回すことが求められている。

 

 もっといえば、必要なすべての情報が何か?がわからず、どの程度確実か?が見えない中での仮説に基づいたサービスや製品、そして事業の組み立てを行っていかねばならないとういう、なんとも厄介な時代となっている。

 この状況において、血管(=情報伝達)に目詰まりを起こすことがどれだけ致命傷となるか、想像に難くないであろう。

 

 

これまでの市場分析の限界】

 「ファクトは何?」

 「事実なのか、意見なのか、明確に!」

 これまでの現状分析で、恥ずかしながら筆者も上司に指摘されていた。

 

 過去のある一定期間の状態を事実として把握し、確度の高い仮説を練って、市場に問う。そしてまた一定期間観測し、改善策を講じながら(願わくは)成長していく。

 この方法で課題を浮き彫りにし、その対応策を打つことの有効性・重要性は変わらない。

 

 但し、ある程度質の高い仮説を練ることができ(もちろん間違い=市場に受け入れないものもある)、それなりに時間をかけても市場、特に競合が許してくれるという環境が前提にある場合は、だ。

 

 しかしながら、その前提が成り立たないケースが増えている。むしろ、今後は成り立たないことがほとんどになるであろう。

 何故か?

 テクノロジーの急速な発展と、コロナによる生活様式の変化によって、提供価値革新のポテンシャルが一気に広がった。それにより、「何を実現したら市場に受けるのか?」、「提供価値を如何にして市場へ浸透させるのか?」の解を、市場分析のみから導き出すことは難しくなってしまったのである。

 

 

ロジックよりも、エモーション】

 あらかじめ申し上げるが、ロジックが不要と言っているわけではない。ロジックは最低限、事業性を検討する際に必要であるのは変わらない。単なる思い付きや投資が投棄にならないための、リスクマネジメントという意味でも非常に重要である。

 

 提供価値革新のポテンシャル拡大により、ユーザーは自身でも認識していないような価値に出会うことがある。

 その時には「そうそう、そういうの探してたんだよね」という従来の感覚ではなく、「心が動く」、「気持ちに響く」が先に起こる。

 そして、あとから何故そう思ったのかを整理し、購入意思決定を行うもしくは、購入意思決定の妥当性を担保するのである。そう、購入意思決定に「エモい」かどうかが重要となっている。

 ゆえに、テストマーケティングの結果や、市場分析から購入意思決定の要件を導き出すことが難しくなっており、身近にどう感じたかを赤裸々に伝えてくれ、しかも市場の縮図のような多面的な観点からの声が必要になったのだ。

 

 これまでユーザーの立場でものを見るということは、どの企業でもやってきている。

 しかし、ロジックサイドのコメントは把握できるも、エモーションサイドのコメントまでは把握してないケースが多い。

 主な理由としては、「必要だと思ってないので聞いてない・報告していない」「単なる感想で意味がない・ただの否定になってしまう」などの理由から、報告を遠慮していた、或いは言いにくいなどいろいろあるようだ。

 

 これからは、このエモーション情報が重要になる。

 つまり、マネージャーは、チームメンバー個々に、自身がユーザーとしてこのサービスや製品を手にしたときに、心に響いたか?どう感じたか?(可能であれば)どう感じたいか?どうだったらお金を払ってでも(いくらかは別として)手に入れたいと思えるか?など、感じたことを感じたまま伝えることが、非常に重要である事を示す。

 加えて、その情報こそが報告対象であることを明示することで、これまで報告書にのせる習慣のなかったこれら情報を、積極的に拾い上げることが肝になる事を理解してもらう必要がある。

 「こんな情報を報告したらまずいかも」から「こんな情報こそ報告しなければ」への意識のスイッチを切り替えられるケアをしなくてはならない。

 

 

【高速仮説検証サイクルの2つの輪】

 サービス・製品の妥当性検証がロジックでは限界があり、エモーション情報が重要である事は理解頂けたと思う。

 では、具体的にどのように検証すればよいか?である。

 

 これには、これまでの検証サイクルだけではなく、実際に顧客にサイクルに参加頂く必要があるのだ。

 つまり、ユーザーがどう感じたかはユーザーに聞いてみないとわからない。しかし、ユーザーもいきなり感想をもとめられても、購入意思決定に必要な要件を出すことはできない。

 

 すなわち、企業は組織の中で仮説検証の社内サイクルを回しつつも、何度もユーザーに当ててみる顧客検証サイクルも止めることなく回し続ける(下図、参照)=顧客にもサイクルに参加頂く事が必須となる。

 社内⇒顧客⇒社内⇒顧客といった感じで、顧客とともにサービス・製品を作り上げていくイメージになる。

 もうお気づきだと思うが、この社内サイクルをいかに顧客検証サイクルに近しいものへと昇華できるか、また、多量かつ解釈が必要な情報から、いかに有益な情報を捉えるか、すべてマネージャの情報マネジメント(+ダイバースマネジメント)にかかっている。



 

 

【情報のバトンパスゾーンをいかに減らすか】

 ここまでの話で、必要な情報(エモーション情報)が大量に増える予感は感じていただけたであろう。

 この大量かつ新しい情報が流れる血管を目詰まりなく維持すること、マネージャーの情報を吸い上げ送り出すポンプ=心臓としての機能が重要になることは分かっていただけたであろう。

 

 しかし、チームメンバーが意思決定情報の広がり、そのための自らの感情・解釈・意見の発信の重要性と実行の必要性を認識してくれたとしてもやはり、情報伝達のバトンパスゾーンで伝達漏れは起こる。

 そのバトンパスゾーンとは、文字通り情報を手渡すタッチポイントで、タスク・ピープルマネジメントのために存在する、支社・支店などとの物理的距離と階層構造(管理範囲の原則が必要な業務のために設定される括り)による隔たりにおいてエラー(伝達漏れ)が起こる。

 

 悪意はなくとも、階層や距離は情報が必ず欠落する要因となる。

 伝える側が重要だと思う情報だけあげる、エグゼクティブサマリとして要約化(要約は伝え手が判断して取捨選択する)された情報をあげる。タスクやピープルマネジメント情報など伝達サイドの解釈、判断が介入する。

 厄介なのは、この解釈・判断がこれまで通りでよいものも多数ある。

 階層や場所にかかわらず共有すべき情報とは何か?それはどのように共有するのが適切か?について明らかにし、同じデータベースで議論や意思決定ができるようにしておくことが重要である。

 

 情報伝達の目詰まりが怖いのは、その情報を知らされていないだけに、目詰まりが起きていることに気づけないことにある。それに気づいた時は、大方、何らかの事件が起きてからとなってしまうことが怖い。

 是非、読者の皆様それぞれで、自社事業に当てはめてみて、必要な情報とは何か?その情報をどう把握すべきか/どうしたら把握できるようになるか?一度、検証してみてはいかがであろうか。

 

 次号は、この情報マネジメントとその前提の変化を受けて、いかに意思決定の方法を最適化していくか、「意思決定の目詰まり」について取り上げたい。意思決定を正しく行うためにも、この情報のマネジメント、血管の目詰まりを解消しておくことが重要である。

 

 

 DLAでは、組織の多様性を引き出すリーダーを「ダイバースリーダー」として定義し、これからのマネジメントのカタチとして、このダイバースリーダーの考え方と行動を組織にインストールするお手伝いをしています。リモートワークを始め、マネジメントの前提が大きく変わる中で、業務・人・情報のマネジメントをいかに最適化していくか、課題をお感じになられている企業様がございましたら、お気軽にご相談ください

 

T.Y

 

 

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