ダイバースリーダーシップ推進協会 ブログ

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“不確実性の時代に最適な意思決定を模索する” 目詰まりのない組織 #8 ~ アフターコロナも輝く組織でいるために ~

【不確実性時代における意思決定プロセス】

 前号では、意思決定に必要な情報が増え、かつ、ユーザーも私たち企業も正解がわからない中で、いかに売れるサービスや製品を作り上げていくか?仮説検証のサイクルの変化について、情報伝達の目詰まり、情報マネジメントの在り方を血管に例え述べた。

 前々号で述べた心理的安全性も、前号の情報伝達の大きな目的の1つに「正しく意思決定を行う」にある。

 逆に言えば「正しく意思決定を行う」ためには、ともすれば見逃されそうな現場の貴重な意見や、情報伝達の在り方も変わらなければならいということである。

 

 これまで触れてきた、心理的安全性も情報伝達も比較的事業現場に近いところで起こる話であった。

 しかし、事業現場・事業部門が自らの振る舞いや意識の変化の必要性を理解し、実行してくれたとしても、意思決定、すなわち経営幹部層が変わらねば、結局何も変わらない。

 インプットがいかに最適化されても、その活用プロセス=意思決定プロセスが最適化されなければ意味がない。

 

 現に、経営TOP自ら「意思決定を行う経営会議に使う資料、判断基準がずっと変わっておらず、それじゃベンチャーに勝てない」と課題意識をもって、新規事業の意思決定モデルを既存事業とは別枠で構築・運用した大手企業様も存在している。

 

 ゴールを見定めることが難しい不確実な時代で、グローバルレベルで誰が競争・強豪プレーヤーになるかわからない中において勝ち続けるために、意思決定がどうあるべきか?

 今号では企業の“脳”=「意思決定の目詰まり」について触れたい。

 

 従来、意思決定の場で重視されてきたのは、“売れる確度”、“儲かる可能性”の確からしさではなかろうか。

 それがある程度の可能性、すなわち、ロジックで説明しきれる程度に見通せていれば何よりであり、その判断基準は重要な指標の1つであるべきであることは変わらない。

 

 問題は、 “売れる確度”、“儲かる可能性”が見通せない、全く新しい価値を提供するような新事業を、いかに的確に、且つスピーディーに意思決定するかである。

 

 前号でも述べた通り、市場分析ではなく、先端テクノロジー起点でビジネスが生み出されるようになり、ユーザーも我々も思いもつかなかった価値提供が可能になった。

 

 これにより、「行ける気がする!」が重要な要素となったが、同時にこの要素は十分な確証はない。

 従って、まさに“意思”として決定せねばならない場面で、的確に決断できるための意思決定の在り方も整えておくことが必要になっている。

 

 残念なケースとして(あくまで筆者のヒアリングベースで、統計的な解析は行っていないが)、これまでの意思決定方法で投資が否決された新規事業が数多く存在する。

 もっと残念なことに「確度の高い事業計画を再度提出せよ」という終わりのない物語が始まり、時間だけが過ぎて行っているケースも散見される。

 

 では、どのような意思決定の方法を考えるべきなのか。

 

 「ユーザーとともにサービス・製品をつくる。」聞いたことのあるフレーズであろう。

 これは、我々企業がサービスや製品に載せて発信する価値情報をたたき台に、ユーザー自らも自分が求めているものを感じ、考え、そのフィードバックに企業が応えるというプロセス・サイクルで、サービス・製品を創り上げていくというものである。

 

 異なる言い方をすれば、サービス・製品創りにユーザーが参加している以上、出来上がる前から市場獲得競争は始まっており、出来上がった時にはすでに勝負はついている。

 更に言えば、これからの競争のルールは、上記がベースになっていくと考える必要がある。

 そして、このルールを前提に、意思決定も適応しておく事が求められるのである。

 

 

【シナリオ設定と投資意思決定のフェーズドアプローチ】

 これまでの意思決定では、最初にGo/NoGoの判断をすれば、しばらく大きな意思決定はなく、3~5年後に撤退基準に合わせたGo/NoGoの判断、所謂、「短黒・累赤解消」の検証くらいではなかっただろうか。

 

 一方で、新しい競争のルールの下での意思決定は、サービス・製品の開発、事業化プロセスに伴走するかたちで継続的に意思決定が行われていく必要がある。

 過去にないサービス・製品、事業であればあるほど市場の見極めが難しくなり、収支計画をロジカルに算出することが困難、というか意味がない。

 その代わりに、成功に向けてどのようなストーリーを描いているのか、描けているのかが重要になり、そのストーリーにどれだけ沿って進めているのかの検証が大切だ。

 

 そして、このストーリーには必ず、起承転結、すなわち事業化プロセスのフェーズが明確にされている必要がある。

 意思決定は、このフェーズの切り替えポイントで、次のフェーズに移行してよいのか?戦略の切り替えとそれに必要な追加投資を行うかどうかを判断することになる。

 これが、サービス・製品の開発、事業化プロセスに意思決定を伴走させると表現したゆえんである。

 

 このように、事業化のシナリオとフェーズを明確にすることで、不確実性の中で、チャンスを逃さず、リスクもコントロールされた新規事業開発・意思決定が可能となる。

 

 蛇足ではあるが、シナリオはどう頑張っても予測の枠をでない。 

 その精度や、リスクを先行して捉えるという意味でも、標準的な期待シナリオだけでなく、ベストとワーストシナリオの準備、特に次のフェーズへの移行意思決定時には、ワーストシナリオにおける二の矢・三の矢の検討も重要である。

 

 新ルール適応型の伴走型意思決定は、実は新しい意思決定モデルはなく、以前から存在していた。 

 しかし、これまで実際には事業意思決定モデルとしてあまり活用されていない感がある。

 

 これまでは、この意思決定モデルが必要なほどの新規性のある事業がなかなか出てこなかったからか、単に使う機会がなかったからか明確な理由は定かではないが、これからは必須であるため、改めてご紹介させていただいた。

 

 そして、このモデルを使うにあたって一番難しいのが、最初の意思決定、「そもそもこのサービス・製品を創るのか?その事業にチャレンジするか?」の判断である。

 

 

【最低限の投資を許容するチャレンジ価値基準】

 最初の意思決定でもっとも重要なのは、文字通り「意思」であると思う。

 

 リスクをとってまで、我が社がやるべき大義が存在するのか?そこを徹底的に突き詰める必要がある。これは、成果の不確実性が高い、多くの不安が存在する中でサービス・製品創りを進めることには、暗中模索を繰り返すというストレスが存在する。

 特に初期のフェーズはこのストレスは大きく、そこを切り抜けるために、強い合意形成・納得感をもった大義が必須であり、「我々はそこに行くのだ!という誓いを立てる」場が初回の意思決定の場となる(その誓いが立てられない時、大義が成立しない時、NoGoの判断をすることになる)。

 

 一例として、最初の意思決定、事業の構想と最低限の投資を行うために必要な情報を示す。

 

・サービス・プロダクトイメージ、事業・意思決定シナリオ(投資停止・撤退判断含む)

・想定している提供価値と、それがユーザーにとって価値となる理由

 -顕在・潜在を問わず顧客の課題解決、達成したい事に寄与するか

・その価値提供を我が社が行う理由(大義

・その価値提供を行える可能性、行う意味の大きさ

 -市場の規模感

 -想定される競合の強み、市場参入の度合い

 -価値提供のアドバンテージ(チャネル、技術、特許、既存資産の活用など)

 -サービス・プロダクト提供のフィージビリティ

 

  このように、ゴールの具体性ではなく、事業の意味やシナリオの実現状況(とその補正)に基づき、意思決定を行っていけるかどうかが、「アフターコロナで新しい価値提供を実現する輝く企業」であるための必要条件であるとDLAは考える。

 

 既存の意思決定のルールや在り方に、違和感や問題意識をお持ちの方は、一度、検証してみてはいかがだろうか?その際に、本号が多少なりともお役に立てれば幸甚である。

 

 

 DLAでは、意思決定の仕組みの整備(会議体や投資・撤退基準の整理、情報整理フォーマットの整備など)から、意思決定の場のファシリテーションまで、各企業様の理念・事業の在り方に応じた意思決定サポートを行っております。

 新規事業の提案はあるが事業化されない、意思決定が特定の少数の方のみで行われていて不安に思うなどある企業様いらっしゃれば、お気軽にご相談ください。

 

 

T.Y

 

 

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