副業推進。その危険性、本当にわかってますか?
副業解禁が求められ、企業はその声に応えるかのように、「解禁」に向けた動きを取り出した。
リモートワークとともに企業の柔軟性を示す代替指標として、採用市場において評価されていることもあり、副業解禁の動きが広がっている。
初期はベンチャー企業を中心ではあったが、昨今では大手企業でもこのような取り組みが広がり、先日は銀行もついに副業解禁を宣言した。
もちろん、実際に副業を行うためには各社それぞれの条件があり、従業員側も希望はしているものの、利用するかは別問題であるから、どの程度の普及率・利用率かは定かではない。
しかし、働き方改革の一環としても国レベルで推進され、風潮としてもここまでくると無視できない。
良い部分だけではなく、副業のリスクについても正しく理解したうえで、利用してもらいたいという趣旨で、今回は副業の危険性について考察する。
【“解禁”?副業はなぜ禁止されていたのか?】
“副業解禁”。
“導入”ではなく“解禁”、つまり今までは禁止されていたのである。
気にしたことはないかもしれないが、どの企業の就業規則にも、ほぼ100%副業に関する規定がある。
そして、禁止とされてきた。
この背景をしっかりつかむことが、副業のリスクを捉えることにつながる。
ご存じの通り、女工哀史にはじまる過酷な労働環境をいかに改善するかという「労働者保護」という一貫した文脈で工場法、労働基準法などいわゆる労働法制は検討・制定されてきた。
副業という言葉はないが、就業制限を明確に打ち出すことで、過剰労働が強いられることを防止ししてきた。
この「労働者保護」の精神と、企業側の労働力の確保というニーズが一致し、
「自社業務に専念せよ」となり副業は禁止された(もちろん情報漏洩防止もある)。
【なぜ、副業が推進されてきたのか?】
前述の「柔軟性の明示」など姿勢系の目的は置いておき、「自社業務に有益な経験・情報の獲得」「優秀な人材の流出防止」を目的に副業解禁する企業が多いようである。
非常にそれっぽいが、それを真に受けている人事はいないであろう。
では、なぜ副業を推進しているのか?答えは「人余り」である。
世の中全般的に「人不足」がうたわれているが、不足しているのはスキルの質と量であって、人ではない。
人は余っているところには余っている。
企業の本音としては、スキル不適合人材への報酬は減らし、スキル適合人材の確保へ投資をシフトしたいのだ。
かといってスキル不適合人材をクビにしたり、支払減をするのは難しい。
そこで、副業の解禁である。
「これ以上、給与は上がらない、もしくは下がりますので、他社で仕事をして、その分の給料は他社からもらってください」という、会社の枠を越えたワークシェアの推進である。
【副業なんて存在しない。主主業の危険性】
副業とはその仕事を請け負う側の発想で、依頼する側には主業しか存在しない。
土日に趣味の延長で、コンピニなどの時間仕事を、といったちょっとしたお小遣い稼ぎ程度(これを副業というかは別だが…)であればよいが、現在の会社でまかされているようなレベルの仕事を別の会社からもとなると、これはもはや「主主業」である。
独立した2ボスからの業務指示となると、これをうまく管理し、QCDを担保するのはかなり骨が折れる。
どちらかの仕事が終わらなくなり、土日や深夜も働かざるを得ず、それがもう一方の仕事にも影響を与える。
結果、身体・精神の健康を害し、共倒れになる。
残念ながら、ほとんどの方(一般的な能力・スキルレベルの方という意味)のケースで、このような悪循環を生みだす結果になるだろう。
【1つの企業で成長と貢献こそ大原則】
このような危険性を考えると、多くの方は、自社の業務に専念すべきである。
中途半端なスキルを、その提供先を増やすことで総提供価値を増やすという、自滅的な取り組みではなく、短期的にはキツいかもしれないが、その時間と努力をリカレント教育も含め、自己成長のために使うべきである。
比較的早いタイミングで副業を解禁した大手IT企業の部門長の方がこんなことをおっしゃっていた、
「できるやつには仕事が集まり、評価され、そしてまた面白い仕事がくる。副業などしている暇はない。そうではないもっとちゃんとやれという奴ほど副業申請してくる。副業をする前にもっとやることがあるだろうというのが本音です。」
イノベーションの推進の一環で解禁した副業も、なかなかうまく行っておらず、この先にあるリスクを思い、副業を解禁した自社の意思決定の過ちを、この部門長さんは悔いていた。
今回は、リスク検討が不足しないよう、あえて副業解禁に批判的に書いた。
しかし、副業は、毒にも薬にもなる施策であり、うまく使えばきっと役に立つ。
正しい処方と服用で、リスクが顕在化せず、目的が達成できるようにうまく活用してほしい。
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TY
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