“DXの実現。新事業創造を阻む、現場の目詰まり” 目詰まりのない組織 #9(下) ~ アフターコロナも輝く組織でいるために ~
【現場の目詰まり〜後編〜】
顧客と対話を繰り返しながら事業を創っていくという新しい事業構築アプローチ、その意思決定の前提となる、事業構築アプローチの変化について、前号より上下2回に亘って取り上げさせていただいている。
前号から引き続き、事業立上げ・確立こそが会社組織の存在意義であり、勝ち/価値を継続する要であるということから「腰」と捉え、その機能不全を「腰の目詰まり」として本号でも論を進める。
これまで、テクノロジー(IT)の進化がビジネスモデルの可能性、新価値提創造・提供の可能性を格段に広げたことは述べてきた。
しかしながら、業界をリードしてきた大手企業でさえ、ITをビジネスの根幹に据えた取り組みは行ってきておらず、それすなわちDXのコアコンピタンスを持ち得ていないと言う事である。
したがって、そのためのリソースを外部から調達せざるを得ない。
これまでの、外部“ITベンダー”の活用だけでなく、事業構築・戦略実行のイコールパートナーとして、必要な技術力をもったIT企業の活用が必須になっている。
「IT統合力」(詳細は前号参照)を発揮し、それらIT企業、外部リソースをイコールパートナーとして取り組めるかどうかにかかっている。
前号では、その実現には、
・企業の枠を超えた多様性の活用(目的の一致を前提とした、意思決定における意見の質重視)
・これまでの優秀者の意識・行動適応を助ける心理的安全性の確保
の課題に触れた。
本号では、この一連の意識改革に続き、DXの本来の目的である、BX(ビジネストランスフォーメーション)の実現に向け、新事業創造の具体的な肝についてお伝えして行きたい。
【仕掛と製品。どこから品質は担保すべきか】
エンジニアとのパートナーシップが確立でき、DX・BXが進む。
次に問題になるのが、品質の考え方である。簡単に言うと「そんな品質のものを、市場に出せるか!」問題である。
先に触れた、顧客とともにサービス・事業をつくるとは、大雑把に言うと、仕掛品レベルで市場に投入することである。
最初はもちろんコンセプトレベルでの需要創造可能性調査からはじまるが、次のステップとしてはプロトタイプの投入となる。
このプロトタイプで、UX(ユーザーエクスペリエンス)の確認を通じた具体的需要創造と、それを満たす追加機能・ユーザビリティ(使い勝手)の把握を行う。
そのため、一定のユーザーにトライアルをお願いすることになるが、機能不足に加えて、品質トラブルも一定数発生する。
この“まともではない製品”を市場に出すこと、ある種不具合がでることを前提にユーザーに利用いただき、不具合の把握・解消していくことに、抵抗をもつ企業・現場は非常に多い。
ソフトウェアの場合、有償提供サービスとなっても、普及していく間ずっとこの状態(追加ニーズと不具合の継続的発生)が続く。
この完成しない/していない製品の販売は、これまでのビジネスでは考えられないことであり、この品質レベルを許容できずに、残念ながら「こんなものは使えない」といってPoC(アイデアやコンセプトの実現可能性検証)のみで将来性のある新規事業が止まってしまったのを、筆者はたくさん見てきた。
サービスや製品の市場投入が、一気に前倒しされるがゆえに、顧客(候補)とともに事業づくりを行うこの事業創造モデルを有効に回すためには、「完成品としてスタートする時点の定義」、「進化しつづけるサービス・製品における担保すべき品質の定義」を明確化させること。
そういう新規事業モデルの“かたち”であることを前提に、品質の捉え方・考え方も最適化させる必要がある。
【サービス・製品進化のポイント。ニーズの優先順位付け】
新事業創造プロセスにおいて品質問題と並行して大切になる視点として、ニーズの優先順位付けがある。
新しいサービス・製品を創るにあたり、どういうものを作りたいのか? それはなぜ? というコンセプトを明確にする。
そして、このコンセプトに「たしかにそうだね」と共感してくれるユーザーが、新事業創造プロセスに加わってくれることになり、このサービス・製品が出来上がることが自分のためになる、と「自分ゴト化」する。
このユーザーの有難い思いが、今度は、ニーズとしてフィードバックされるようになる。
思いが強ければ強いほど、ニーズ・期待値も強くなる。
ここで難しいのが、このニーズは、当該ユーザー個別のニーズなのか?或いは、市場を形成するカギとなる普遍的なニーズなのか?を冷静に判断することである。
目の前のユーザーは自分事として、熱心にこうしてほしい、ああしてほしいとフィードバックをくれる。
対面している担当者は「リアルな顧客の声として、これは必要だ」と、徐々に“企業側”から“ユーザー側の人”として製品開発チームに要請するようになる。
目の前の顧客の強い要望を後回しにする、もしくは実装をお断りする(カスタマイズ開発になる)ことを伝えるのは、顧客担当者にとってはかなりのストレスであり、時に必要性を盛って依頼(妥当性の主張)してくることもある。
この強い個別の声(お客様は神様的要望)に、製品開発チームは耐えねばならない。
製品開発チームは、これらの声が、そもそも製品コンセプトとあっているのか?さらには市場を形成する多数のユーザーが望むニーズになり得るのかを冷静に判断し、実装優先順位を決める。
ユーザー担当は、その結果、自らの担当顧客のニーズが他のニーズに劣後することに不満をもち、製品開発チームにプレッシャーを与え、そのユーザーもがっかりし、時に新事業創造メンバーから離脱してしまう。
製品開発チームは、その状況に耐え、ブレることなく、市場観点での優先順位付けを行い続ける必要がある。
この製品開発チームの強さの獲得と、ユーザー担当の行き過ぎた顧客志向を市場志向へと戻し、ユーザーコミュニケーションを続けさせるという2つの目詰まりの解消が求められる。
尤も、多くの場合、先の神様の声は、現状の置き換えや課題解決であり、中長期では最終的に市場観点でのニーズを採用してBXを実現する事となる。
このように、ウオーターフォール型のサービス・事業開発から、顧客対話型の市場創造並行型のサービス・製品開発へと、新規事業開発アプローチも広がり、多様化している。
前号の意思決定だけでなく、それを推進する各機能・各担当も、変化を理解し、それぞれがやり方・臨み方を最適化する必要がある。
構想は立ち、意思決定もされているのに、現場が動かない。PoCばかりで、なかなか前に進まない。
というお悩みを抱える企業様は、是非、事業立上げのプロセスに目詰まりがないか検証いただきたい。
これまで、本メルマガシリーズにおいて、頭や脳から心臓・血管、いわば身体のセンターラインに触れ、そして本号で腰に到達した。
アフターコロナという新しい環境下で、いかに新しい事業を生み出し、成長を続けるかというところを、輝く組織であり続ける主軸として位置づけ、論を展開してきた。
次号からは、この事業創造や成長を支える具体の機能、身体で言えば、手や足といった部位の目詰まりに触れていく。
DLAでは、戦略の“実行”に焦点をあて、意識改革も含めたハンズオンで戦略実行支援を行っています。
DX・BXの構想は立てるも、PoCからなかなか先に進まない、構想が具体化せず、新事業が生まれないといった点でお困りの企業様がいらっしゃれば、お気軽にご相談ください。
T.Y
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