ダイバースリーダーシップ推進協会 ブログ

ダイバーシティと多様性を強みに変える組織作りコンサルティング 育成のプロ集団、ダイバースリーダーシップ推進協会のブログです。

AI時代の3つの選択〜”選択眼”を鍛える

【今後確実に起こる3つの変化とは】

2017年現在、日本の状況を客観的に見てみると、今後少なくとも3つの大きな環境変化が訪れることは疑いようがない。

1つ目は、労働人口の激減

 

2つ目は、情報量の更なる急増

 

3つ目は、AIを中心とするテクノロジーの指数関数的な進化

今回は、これら3つの変化の意味することと、それに対しどう備えるべきか?について考えてみたい。

 

労働人口の激減>

2016年の総務省「労働力調査年報」によると、2065年時点で、日本の労働力は約40%減るという予測がされている。2018年を境に18歳未満の人口は減り続けることは既に見えており、労働力減少は、来年から影響がで始める「今そこにある危機」である。

減少した労働力をいかに補完するかについては、ダイバーシティ施策として、女性やシニア、外国人の雇用推進といった施策が既に議論され、進んでいるが、いずれにせよ今よりも働く人の多様性が進むことは確実であろう。(これについては、メルマガ・ブログのの第1号に考え方を取り上げています)

 

<情報量の更なる急増>

既に情報化社会と言われて久しいが、今後も情報量は増えていく。どの程度増えるのかについて、総務省の統計(「ICTコトづくり検討会議」)がわかりやすいので、一部抜粋して紹介すると以下のようになる。

 

インターネット社会のデータ量を表すと言えるデジタルデータの量は、2000年に世界で6.2EB(エクサバイト)だった。これが、2015年には7ZB(ゼタバイト)に増えており、更には2020年の予想では40ZBというデータ量となるというものだ。

あまりピンと来ないものと思われるので、仮にiPhone1台分の容量である64Gで換算すると、2000年では約9700万台分のデータ量だったが、2015年では1009億台分に増えた、という計算になる。
さらには、2020年には6250億台分まで増大するそうだ。(現在の地球の人口を70億人とすると、地球89個分の人口が、iPhoneを1台ずつ所有しているデータ量に相当する)

 

複雑なのは、増加したデータ量は、全ての人口で共有されているわけではないということだ。デジタルメディアに詳しい、さとなお氏こと、佐藤尚之氏の著書によれば、日本でSNSを習慣的に見ない人口は概ね6000万人超に上る。すなわち、日常的にソーシャルメディア、デジタルの情報に触れている国民の半数の人たちは、2000年からの僅か15年で、約1000倍の情報量に晒され、一方で約半数の人たちは、量・質・媒体もほぼ変わらないという二極化の時代となっている。



<AIを中心とするテクノロジーの指数関数的な進化>
AIなど新興テクノロジーが労働環境に与える影響について、以前、”シンギュラリティ時代の人材マネジメント”として当メルマガ・ブログでも考察した。多くの変化は起こるが、1つのエッセンスとしては、今後、なくなる仕事、新しくできる仕事が激しく混在することになりそうだ。



上記3つの変化は、実際には渾然一体となってやってくる。
多様な人、多様な文化、多様な情報、多様なテクノロジーが複雑に絡み合う、予想もつかない変化の時代である。
好むと好まざるとに関わらず、今後より一層その度合いは増していくだろう。



【だからこそ”選択”が重要】

では、この混沌とした時代に生き残る上で、重要な要素は何だろうか?
変化の時代に最も重要なことは、目先の変化に翻弄されない明確な目的と意思を持つことだ。

明確な目的と意思をもつとは具体的にはどんな状態だろうか?
特に、3つの重要な”選択”が必要だと考える。

 

<第1の選択 ”情報の選択”>

アメリカ大統領選挙で話題になったフェイクニュース問題のように、インターネット時代の情報は、玉石混交なのである。受け手側は、膨大な量で、且つ、クオリティや視点がまちまちな情報に常時晒され、結果として、見たい情報しか見ない可能性が高くなることに加え、無意識にバイアスを持ってしまいがちだ。

 

SNS等の機能でリコメンドされる”気になる情報”は、既に視点が偏っているが、それだけが周りにあるように錯覚したり、意図的にその関連情報だけを見にいってしまう人間の性がある。しかも、その中には不正確な情報が紛れ込んでいるかもしれないのだ。不確かな情報でも、多く触れればいつの間にか正しい情報だと認識してしまう。

 

発信側は各々意図を持って情報発信しているため、偏りや偽の情報を止めることは、現時点では難しい。すなわち、どの情報を選ぶべきか、どのように検証すべきかは、取得する側が意思を持って確かめるしかないのだ。

 

<第2の選択 “競争と協奏の選択”>

テクノロジーの変化は、様々なイノベーションを起こりやすくしている一方で、ビジネスモデルや、製品・サービスの短命化も招いた。

この状況は、同時に、自前主義の崩壊を招くことになる。自社、もしくは自社グループだけで完結できたものが、それだけでは質・量・スピードが追いつかない時代になるということである。

 

これに備えるには、どの分野を競争分野と定め、自社として極めるのか?
同時に、どの分野を”協奏”分野とし、他社や様々なプレーヤーと共同して進めるのか?
この選択の目利きが不可欠となる。



<第3の選択  “多様化の選択”>

第1、第2の選択により選んだ方向性を実現するために、どのような人材、どのような人材Mix(=チーム)でビジネスを進めるのか?そしてその人材・チームの新しい働き方、人材マネジメントのスタイルとしてどのような選択肢を用意すべきなのか?が目的達成のための条件になる。



【学習量が命】

AIの質をあげるには、学習量が成否を分ける。
今後ビジネスの成否も、実践した数が成否を分ける時代になる。
不確実性の高いものが溢れ、過去の延長にはない事柄が増える世界では、いち早く実践し学習した者が勝者となる。


世の中には、やりっぱなしのPDCAが溢れているが、今後は、素早く学習するために、短期間で確実に検証し質を高めるマネジメントサイクルが必須となるのである。

(このために、DLAでは5A'sというマネジメント手法を開発しました。詳しくはお問い合わせください

 

金杉リチャード康弘

 

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自分の偏見度合いご存知ですか?

自分の偏見度合いご存知ですか?

梅雨に入り、蒸し暑い日々が続いておりますが、多くの企業では、新入社員が研修を終え、これからOJTというところもあれば、既にOJT真っ最中という企業があろうかと思います。

 

メルマガを購読いただいているみなさんの中にも、OJTとして新人を直接教育されている方もいれば、部署/部門の長として見守る立場の方々と様々ではあるかと思いますが、みなさん、ここで質問です。

OJT(新入社員)を受け入れた時、下記のようなことを思い浮かべたご経験はありませんでしたか?

  • 研修が終わったばかりの新人に何ができるのか。何もできないし、面倒を見るのが厄介だ。
  • 名門大学出身だから、さぞかし、即戦力になるだろう。
  • 今の新人は扱いにくい(例えば、残業はしない。飲みにケーションなんてもってのほかなのだろう)

既に、お気づきかと思いますが、上記にあげたものは、以前、メルマガでご紹介させていただいたUnconscious Bias(無意識の偏見)の一種です(※メルマガVol.1&4参照)。

 

確かに、新入社員は、入社した個々の企業文化に触れて、間もないかもしれませんが、今や多くの新入社員は、何らかのバイトやインターンにての職業経験、海外留学、ボランティア、スポーツ・芸術・文化におけるハードな経験をしている人も多く、高度な実務、専門性の高い業務をいきなりすることは、難しいかもしれませんが、彼らの中での過去の経験や、研修から学んだことで、何かしら活かせる能力や発想があることは事実です。中には、いわゆる勘所のいい方は、上長を驚かせる才能を発揮する場合すらあります。

 

「何もできないでしょ」「これができるはず」と決めつけるのではなく、職場の上司や先輩が新人の能力を見極め“何ができるか”、“何をInputとして与えればできるか”、を考え抜くことが重要なポイントになります。

また、決して、残業をすることや飲みにケーションを肯定するわけではありませんが、新人の全員がそのような類を毛嫌いしているのでしょうか?

コミュニケーションにおいて、相手は、自分の鏡です。自分が相手に苦手意識を持っていると、相手も敏感にそれを感じとります。また、自分が苦手意識を持っていることで、たとえ相手が全く持っていなくとも、自分に対して持っているのではないか。と疑ってしまうものです。

このような話は、中途採用や部署異動で新しい職場に入った方がたにも、同様に発生します。そしてまた、中途採用の場合は、この無意識の偏見が双方に発生します。

 

例えば。。。

  • ○○企業のXXXのポジションから来たのだから、相当仕事ができるのだろう。
  • ○○コンサルティングにいたのだから、何でもできるのだろう。
  • 前職では、相当評価されていたし、すぐにもっといい成果をだせる!!

勿論、企業の人事の方々も優秀な人を外から取り込むために、中途採用をするわけですから、前職の企業やポジション、過去の職務経歴によって、Expectation(期待)が上がるのは致し方ありません。また、転職する方も、多くの方が、経験をもとにしたステップアップとなれば、前職での状態と比較します。

スムーズに新しい職場で実績を上げていく方も多くいる反面、期待通りの成果を出せない人もいることは事実です。それは、もしかしたら、前(職)のチーム内での相乗効果で、最高のパフォーマンスを出していたとしても、新しい職場では、それがうまく機能せず、思ったほどのパフォーマンスが出せないという場合もあります。現に、私も転職を経験しておりますが、転職後の働き方の違い、期待値や企業文化の違いによる、前提の違いに驚きました。

 

ここで、以下の観点で是非立ち止まって考えていただきたいのが

そもそも前提の認識があっているか

例えば、「料理ができる」の「できる」をとっても、様々です。「レシピを見れば、簡単な料理はできる人」「冷蔵庫のあまりもので、何でも作れる人」「お店顔負けの料理が作れる人」、すべて「料理ができる人」には変わりありません。

しかし、例えば、「お店顔負けの料理が作れる人」=「料理ができる人」の定義だと思っている人がいたら、その人にとっては、「レシピを見て、簡単な料理ができる人」は料理ができる人とはならないかもしれません。

新入社員にしても、中途採用にしても、目標、想い、過去の経験等、できる事やできない事を印象やイメージだけで判断する、させるのではなく、お互いの認識があっているかどうか、正しく把握しようとお互いがしているか。勝手な思い込み(=無意識の偏見)で、一方的に判断するのではなく、前提に立ち戻り、お互いが同じ言葉、認識で理解しているか、是非とも、立ち留まって考えていただきたいです。

 

外からの目を活用しよう

新しいメンバは、純粋(新鮮)な目で、物事を認識できます。それは、長く同じ企業・文化に慣れ親しんで、(無意識に)当たり前と思い込んでいることに対しても、同じ風土を経験していないメンバにとっては、なぜ?どうして?となるでしょう。その時に、かたくなに、「今までそうだから」、「これが当たり前」ではなく、自分の言葉で、その状況を正しく説明できているか。或いは新たな視点の疑問を歓迎し、“今までの当たり前”は今後も正しいやり方なのか?と再認識するいい機会でもあります。

Unconscious Bias、ダイバーシティ、チーム最大化等ご興味のある方は、是非DLAにご相談ください。

 

M.S

 

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AIの進化が気づかせてくれる、「多様性への向き合い方」

2017年6月25日放送の「NHKスペシャル 人工知能 天使か悪魔か 2017」をご覧になったでしょうか。(番組情報はこちhttp://www6.nhk.or.jp/special/detail/?aid=20170625

番組では、今年(2017年)春に行われた将棋界の最高位・佐藤天彦名人と最強のAIが激突する電王戦2番勝負の様子を中心に、現実社会で「AIが役に立ち始めた」すなわち「人間が考えるよりも良い結果を出し始めた」事例が紹介されました。今回はこの事例をテーマに、AIの進化が気づかせてくれる、「多様性への向き合い方」を考えてみたいと思います。

 

【人間が考えるよりも良い結果を出し始めたAI】

  • 将棋電王戦2番勝負では、AIポナンザが初手から「人間が直感でまず捨てている(悪手にしか見えない)選択肢」を繰り出し人間側を大混乱させるも、人間が読みきれない先で各手がしっかりと活かされるという局面を連発。投了間際、佐藤名人が棋譜を読み返しても「自分にミスがあったとは思えない」というレベルで全力を尽くしたにも関わらず完敗。
  • 名古屋のタクシー会社では、客がいる場所を指示するAIを導入。新人ドライバーに限らず、初めは半信半疑だったベテランドライバーでさえも「これは使える」というレベルで客が待つ場所に誘導。
  • シンガポールのバス会社では、事故を起こす危険性の高い運転手を評価するAIを導入。危険性が高いと評価された運転手に安全教育を実施。
  • アメリカの裁判所では、過去の膨大な裁判記録を学んだAIが被告の再犯リスクを予測、刑期の決定や仮釈放の判断等に活用。等々が紹介されました。

 

【理由は分からない、でも、当たっている】

どの事例でも「ベテランを含め、人間では追いつけない」レベルで、AIが実際に役に立ち始めたことが示されています。実はその一方で、ポナンザ開発者自身である山本さんを始め、AIに携わる多くの人が指摘している点があります。「AIがなぜそう判断をしたのか分からない」のです。

AIがついに人間を追い越すようになったきっかけは「機械学習」という技術の発達にあります。非常に大雑把に言ってしまえば膨大な教材データを与え、それを題材にAI自身に学ばせる、ということです。そしてこの際、これまた大雑把に言うと、AIとしては「統計的に『相関関係が高い組み合わせ』を見つけ出し、予測に活用するようにしている」のであって、「因果関係を見つけ出している」訳ではないのです。

AIは何かの「構造」を見出して判断している訳ではないので、「なぜそう判断したのか」を示すことはできないのです。きっとAIが言葉を話すことができるなら「なぜかは知りませんが、人間は、この条件下では概ねこうするのです」と答えるのでしょう。

この「なぜかは分からない、でも、(人間が自分で判断するより)よく当たる」という状況は、適用相手が人間自身であるような場合等において問題を引き起こす可能性があります。

現状、AIの予測はあくまでも「良く当たる」だけであり、「必ずそうなる」というものではありません。(判断対象の構造を解明している訳ではないので当然といえば当然です)「AIの判定結果によりあなたには仮釈放は与えられません」「AIによりあなたは危険な運転手だと判定されました」と言われて、納得できないのも当然でしょう。また、既により一般的に指摘されている通り、「AIが人間の職を奪うのではないか」というのも重要な問題です。

しかし敢えて、本稿ではこの問題を掘り下げることはせず、AIがもたらした「理由は分からない、でも、良い結果をもたらす(可能性が高い)」という現象が私たちに提示するものを考えてみたいと思います。

 

【無意識の固定概念を突き破る】

これまで私たちがふれてきた「科学」は、基本的に「還元主義」という考え方でできています。還元主義は「物事を分解し、細部の構造を理解していけば、全体を理解できる」という考え方です。私はこのことについてはなんら否定するつもりはありません。しかしながら、「知能」というものについては現時点ではこれが通用しないのです。また、現時点で人間が完全な知能を手に入れているわけではないのに「考えれば一つの正解にのみ収れんする」という思い込みが、発想の幅を狭め、結果的に無意識の固定概念に人間を捉えてしまっていることがあるのです。

電王戦2番勝負では、まさにこの「これまで数多くの棋士が築き上げてきた無意識の固定概念」が目前でどんどん突き崩されていき、「最高峰の棋士」が文字通り「頭を抱え込む」こととなります。

しかし、この体験が佐藤名人に大きな刺激を与ることとなるのです。電王戦1局目に破れ、2局目との間に行われた(対人間の)名人位防衛戦において、佐藤名人は今までの定石にとらわれない、新しい手を数多く繰り出しました。

佐藤名人は「人間同士の対局だと、将棋という大きな宇宙の中である1つの銀河に住んでいるだけだった、ポナンザとの対戦で、ほかにも惑星があると気付かされた。今まで気づいていなかったものがあったので、それを顕在化しようとしています」と語ったのです。

 

【ありのままの対象に向き合う】

さて、AIがもたらした「理由は分からない、でも、良い結果をもたらす」という現象が私たちに提示するものをまとめてみたいと思います。

実は、私たち人間にも、自分自身も含めて分からないこと・説明できないことがたくさんあります。また、本人の説明を聞くと、そのことが自分にとっての価値観・優先順位と合わないために混乱してしまうこともあります。
(例:アイドルのコンサートに行くことが楽しみの人にとって、そのために休暇を取ることは全体的な仕事のモチベーションやパフォーマンスを上げるために必須のことですが、上司にそれを説明できるとも、納得させられるとも限らない。等)

AIはこの「説明できないけど、結果は出る」という、これまでの私たちのスタイルからすると「頭を抱えてしまうこと」を、最もストレートに提示してくれているのではないでしょうか。自分が納得できない説明を聞くと、ついつい「なんでそれって必要なの?(=要らないんじゃない?)」と、「説明を聞くフリをした説得」をしてしまうことはありませんか?AIにはこれが全く通用しないのです。何しろAI自身にも理由は分かっていないのですから。そして「重要なのは『理由』ではなく『そうすると良い結果が出る』ということである」という極めて功利主義的なモデルを示してくれているのです。

部下からの提案しかり、妊産婦や様々なメンバーの労働環境しかり、「なぜそう思うのか」「なぜそれを欲しているのか」ではなく、「そうした方が良さそうなのか」「どうすると結果的に全体的なパフォーマンスが上がるのか」にフォーカスする。多様性との向き合い方の非常に基本的な姿を提示してくれているような気がしないでしょうか。

 

矢嶋 一郎

 

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