目詰まりのない組織 ~アフターコロナも輝く組織でいるために~
【オリンピックを振り返る】
緊急事態宣言下、無観客、猛暑という、史上稀にみるオリンピックが閉幕した。
結果をみると、金メダル27個(世界第3位)、獲得総数58個(世界第5位)と歴代オリンピック最高のパフォーマンスとなる、記憶と記録に残るオリンピックとなった。(パラリンピックを合わせると金メダル40個、総数109個と言う実に素晴らしい活躍だった)
これまで最高だった1964年東京、2004年アテネの金16個、2016年リオの獲得総数41個と比較しても、如何に素晴らしい結果だったかは疑う余地はない。
記録については、1年の延期や、開催すら危ぶまれる中、アスリートが気持ちを切らさずに精進した成果であり、心からその栄誉を讃え、沢山の感動に感謝し、お祝いしたい。
翻って、運営面については、異例尽くめの課題と反省の残るオリンピックとなってしまった。
新国立競技場当初案とエンブレムの立て続けの白紙撤回、不適切発言をきっかけとした大会直前での組織委員会会長の辞任・交代、過去のいじめ問題や歴史認識など世界のトレンド、オリンピック憲章に抵触しかねない言動による、関係者の相次ぐ辞任、解任などなど。開催決定から、トラブルは大きなものだけでも十指に余る。
オリンピックにも大きな影響を与えた(受けた?)コロナ対応については、どうだろうか。緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の連発・長期化にも関わらず、感染者の急拡大は収まる気配は無い。ビジネスの世界では「我慢は1年以内(身を切るような構造改革は短期にやり遂げないと組織がもたない)」という常道があるが、すでに統制が難しい期間に達してしまった。
これは取りも直さず政府・政策に対する信頼感の欠如、期待感の無さを象徴しており、連日の首相のメッセージや、関連する担当大臣の失言も含め、この“有事”で、現政府の国という組織の運営力の低さが露呈してしまった格好だ。
【偶然ではない組織運営力の低下】
これらの問題は偶然なのか、一過性のものなのか、或いは知らないところで地殻変動的な劣化が継続して起こっている結果なのか?
オリンピックやコロナ、組織委や政府という非常にわかりやすく、かつ批判・批評しやすい題材ゆえに、誰にでもその問題が認識されているが、実はこの問題は、私たちの所属する会社組織でも起こっているのではないだろうか?
例えば、未だに終息されない、大手銀行のシステムトラブル。頭取がこのトラブルを知ったのは我々と同じニュースであったという組織としては考えられない事実が明るみに出た。
これについて、記者会見で改善すべきは、「企業風土の課題」と言うコメントを繰り返し発言していた。
企業風土。便利な言葉だが、その本質は一体何か?である。
第二次安倍政権において数多ある疑惑を追及する際、盛んに言われ、2017年の流行語大賞にも選ばれた「忖度」と言う言葉が思い浮かぶ。
この変えるべき企業風土を生み出しているものは何か? すべきではない忖度が何故横行するのか?
【組織の目詰まりを把握する】
結論から申し上げると、D L Aでは企業や組織、集団の至るところに目詰まりが起こっているのではないか?との見解に至った。
この“目詰まり”とはどういうことか、イメージを持っていただくために人間の身体で考えてみる。血管に目詰まりが起これば、脳梗塞や心筋梗塞と言う重大な疾患がおこる。脳のシナプスが詰まれば、アルツハイマーが起こる。気管が詰まれば、呼吸困難に陥る。鼻が詰まれば、酸素が足りなくて頭がぼーっとする。
すなわち、有機体としての企業・組織に目詰まりが起こり、その先にある機能が協調動作はもちろん、正しく機能しない状況が発生しているのである。
組織の場合、人間の身体と異なり、感覚的不調を捉え難かったり(気づけない)、目詰まりを起こしている機能(部署)とその影響をうける機能(部署)が異なっているが故に、改善の取り組みを打つことすら難しいケースもある。
D L Aではこの目詰まり“組織における11の目詰まり”として定義した。今回のメルマガシリーズでは、この“目詰まり”に対するDLAの課題提起の背景、それぞれの目詰まりがどういうもので、どう対処していくべきか触れていきたいと思う。
すでに特定部位を強化する取り組みや、特定部位の改善に取り組まれている読者企業もあろうかと思う。それに加えて、本来、自社組織が持つパワーを100%発揮できる状態へと組織を持っていくために、是非、自己組織の健康診断をしてみて欲しい。
組織における11の目詰まり
金杉リチャード康弘
副業推進。その危険性、本当にわかってますか?
副業解禁が求められ、企業はその声に応えるかのように、「解禁」に向けた動きを取り出した。
リモートワークとともに企業の柔軟性を示す代替指標として、採用市場において評価されていることもあり、副業解禁の動きが広がっている。
初期はベンチャー企業を中心ではあったが、昨今では大手企業でもこのような取り組みが広がり、先日は銀行もついに副業解禁を宣言した。
もちろん、実際に副業を行うためには各社それぞれの条件があり、従業員側も希望はしているものの、利用するかは別問題であるから、どの程度の普及率・利用率かは定かではない。
しかし、働き方改革の一環としても国レベルで推進され、風潮としてもここまでくると無視できない。
良い部分だけではなく、副業のリスクについても正しく理解したうえで、利用してもらいたいという趣旨で、今回は副業の危険性について考察する。
【“解禁”?副業はなぜ禁止されていたのか?】
“副業解禁”。
“導入”ではなく“解禁”、つまり今までは禁止されていたのである。
気にしたことはないかもしれないが、どの企業の就業規則にも、ほぼ100%副業に関する規定がある。
そして、禁止とされてきた。
この背景をしっかりつかむことが、副業のリスクを捉えることにつながる。
ご存じの通り、女工哀史にはじまる過酷な労働環境をいかに改善するかという「労働者保護」という一貫した文脈で工場法、労働基準法などいわゆる労働法制は検討・制定されてきた。
副業という言葉はないが、就業制限を明確に打ち出すことで、過剰労働が強いられることを防止ししてきた。
この「労働者保護」の精神と、企業側の労働力の確保というニーズが一致し、
「自社業務に専念せよ」となり副業は禁止された(もちろん情報漏洩防止もある)。
【なぜ、副業が推進されてきたのか?】
前述の「柔軟性の明示」など姿勢系の目的は置いておき、「自社業務に有益な経験・情報の獲得」「優秀な人材の流出防止」を目的に副業解禁する企業が多いようである。
非常にそれっぽいが、それを真に受けている人事はいないであろう。
では、なぜ副業を推進しているのか?答えは「人余り」である。
世の中全般的に「人不足」がうたわれているが、不足しているのはスキルの質と量であって、人ではない。
人は余っているところには余っている。
企業の本音としては、スキル不適合人材への報酬は減らし、スキル適合人材の確保へ投資をシフトしたいのだ。
かといってスキル不適合人材をクビにしたり、支払減をするのは難しい。
そこで、副業の解禁である。
「これ以上、給与は上がらない、もしくは下がりますので、他社で仕事をして、その分の給料は他社からもらってください」という、会社の枠を越えたワークシェアの推進である。
【副業なんて存在しない。主主業の危険性】
副業とはその仕事を請け負う側の発想で、依頼する側には主業しか存在しない。
土日に趣味の延長で、コンピニなどの時間仕事を、といったちょっとしたお小遣い稼ぎ程度(これを副業というかは別だが…)であればよいが、現在の会社でまかされているようなレベルの仕事を別の会社からもとなると、これはもはや「主主業」である。
独立した2ボスからの業務指示となると、これをうまく管理し、QCDを担保するのはかなり骨が折れる。
どちらかの仕事が終わらなくなり、土日や深夜も働かざるを得ず、それがもう一方の仕事にも影響を与える。
結果、身体・精神の健康を害し、共倒れになる。
残念ながら、ほとんどの方(一般的な能力・スキルレベルの方という意味)のケースで、このような悪循環を生みだす結果になるだろう。
【1つの企業で成長と貢献こそ大原則】
このような危険性を考えると、多くの方は、自社の業務に専念すべきである。
中途半端なスキルを、その提供先を増やすことで総提供価値を増やすという、自滅的な取り組みではなく、短期的にはキツいかもしれないが、その時間と努力をリカレント教育も含め、自己成長のために使うべきである。
比較的早いタイミングで副業を解禁した大手IT企業の部門長の方がこんなことをおっしゃっていた、
「できるやつには仕事が集まり、評価され、そしてまた面白い仕事がくる。副業などしている暇はない。そうではないもっとちゃんとやれという奴ほど副業申請してくる。副業をする前にもっとやることがあるだろうというのが本音です。」
イノベーションの推進の一環で解禁した副業も、なかなかうまく行っておらず、この先にあるリスクを思い、副業を解禁した自社の意思決定の過ちを、この部門長さんは悔いていた。
今回は、リスク検討が不足しないよう、あえて副業解禁に批判的に書いた。
しかし、副業は、毒にも薬にもなる施策であり、うまく使えばきっと役に立つ。
正しい処方と服用で、リスクが顕在化せず、目的が達成できるようにうまく活用してほしい。
DLAでは、 “11Type(イレブンタイプ)”を活用した人材活用のコンサルティングから、人材活用のための様々な育成支援を行っております。ご興味のある方は、是非ご一報ください。
TY
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PJの現場から(4) – Planning/Execution機能の強化: 敢えての「隔離」
「PJの現場から」の第4回(最終回)をお送りします。
前回メルマガでは「Planning/Execution機能」に生じていた問題が大きく3つあり、そのうちの2つについて内容と対策事例をご紹介しました。今回はやや例外的な事例となる第3の問題についてご紹介します。
【Planning/Execution機能の状況】
問題③ PJとしての実現性を度外視し、個人的な嗜好性の実現にミスリードする
(マッチメーカーの機能不全をコンシェルジュが個人的な嗜好性も含め誤った方向に増幅する)
【個人の嗜好性の優先】
このPJにおける様々な人材不足を補充する為に中途採用も積極的に実施していました。そうした中で採用されたAさんは、大手外資系コンサル会社・ソフトウェア会社でのキャリアも長く英語も堪能、しばらくフリーランスとして独立して仕事をしていたこともあり、新しい環境でもどんどん自立的に立ち回れる、まさにこのプロジェクトにうってつけのベテラン人材…だと思われていました。
もう一人の重要な人物Bさん。Bさんは現行システムにも詳しく、朴訥・素直な人柄で社内人脈も豊富、このPJの将来構想を練る重要なチームをリードする立場にあり、「この技術をこのシステムに適用したらこんな可能性が開けるのでは」という発想力も豊かなアイデアマンです。
しかし一方で細かい検討のツメは苦手で、そうした面を補佐してくれるサポート役を必要としていました。
そこでAさんをBさんの補佐役につけることになったのですが、しばらくして周囲がBさんの変化に気づきます。
Aさんが補佐に入ったことで更に色々な発想・提言が出てくるようにはなった…のですが…、「何かがおかしい」のです。
例えば:
- 提言が、常に、明らかにPJスコープ(納期・予算)を拡大させる方向でなされる
(いたずらに難易度・複雑度をあげてまで取り組む必要性・効果があるのかが謎のまま) - 発言力がある人の意見を「その人がそう言った」という理由で通そうとする。また、そのことを通じて発言力がある人を取り込み、派閥を形成しようとする
- 意にそぐわないメンバーには、陰で誹謗中傷の噂を流したり、打合せと称して呼び出し大人数で吊るし上げたり等の攻撃を行う
- 「調査」と称して明らかに不要不急の海外出張を繰り返す
- 検討の実務は外部コンサルを発注して丸投げしようとする
(ただし、発注内容をきちんと整理できていないため、結局明確なアウトプットも成果も出ない)
結果的にはこれら全てが、裏でAさんが糸を引いていたのでした。
Aさんは人の心理を読み、弱みに付け込む等の方法で相手をコントロールするスキルに非常に長けていました。
しかし、「PJの成功」には興味がなく、Bさんをコントロール下におき、「自分の影響力を拡大する」「経費で旅行する」という「個人的な満足感」を得ることに専念していたのです。
採用前のリファレンスチェックが甘かったといえばそれまでですが、その後判明したところでは、Aさんはこれまでの会社・現場でことごとく同様の問題を起こしてきた「いわくつき」の人物だったのです。
【対策:「隔離」】
PJへの混乱・悪影響は極小化しなければなりません。
これまで幾多の環境であらゆる相手を手玉に取ってきたAさん、状況証拠的には明らかに「クロ」なのですが、簡単には自分の関与の証拠を残しません。
逆にAさんを追求する動きを察知すると「〇〇ハラを受けている」と騒ぎ立てて牽制を図る等、非常に狡猾・悪質です。
そこで取った対策は「隔離」です。
残念ながらAさんのBさんに対するコントロールはあまりにも強力であったため、Bさんを真っ当な姿に戻す説得は不可能でした。
そこでAさんの負の影響力がPJに波及しないよう、やむなくBさんのチームごと隔離せざるを得ませんでした。
とはいえ上記のような反撃を極力回避するためにも、Bさんチームを「狙い撃ち」にするのではなく、PJ全チームに「フェア」に適用すべき考え方を徹底する、という点に留意しました。
具体的には「活動計画」「予算」をしっかりと管理し、PJ全体で整合の取れた活動計画を維持(更新する際にもPJ全体との整合性を確認)し、予算も活動計画の具体的なアクションに紐づけて見積りを取り、その内容・金額範囲内でのみ支出を認める。という至極真っ当なものです。
※それまでは、Bさんチームはある程度大枠での活動方針・予算枠で管理していたものを、他のPJチームと同レベルの管理としたものです。
こうした対策の結果、Bさんチームのおかしな動きについて、(それでも相当の反撃はありましたが)当面の間は抑制することができました。加えて、本来Bさんチームで検討すべき事項について、他のPJチームに再割当てを行い、なんとかPJ全体としての検討が進められるようになりました。
【今回のまとめ】
今回ご紹介した事例はかなり極端な例のため、対処法の事例紹介というよりも、おそらく参考になるのは次の二点ではないでしょうか。
- 「悪意のあるメンバー」というものも、時に存在する。
- チームの歪みは、放置するとPJ全体に波及する。
しかしながら、特に日本においてはこうした「明らかな悪意をもったメンバー」というものを元々あまり想定していない部分があり、こうしたメンバーを一旦内部に受け入れてしまうと、現実的にはその検知・対応は非常に困難です。
事実、Aさんについて対応を報告・相談した際の上の反応は以下のようなものでした:
- 「そんな馬鹿げたことはあるはずないだろう」と信じられない
- 報告者自身が狭量・過敏なのではないかと疑われる
- Aさんに対して何らかの偏見・執着を持っているのではないかと疑われる
(新参者を軽んじる、あるいは妬んでいる、等) - Aさん一人を受容できない組織は管理者の狭量と受け取られかねないとして、
問題を敢えて顕在化しないように(黙って耐えるように)指示される
こうした反応は、例えばイジメの兆候が検知された場合に誤った反応をしてしまうケース等にも通じるものがありますね。「想定していない問題」が「内部から発生する」ということに、人はなかなか反応できないものなのかもしれません。
チームというものは相互の信頼によって成り立つものですし、そう「信じたい」という無意識も働くものでしょう。
それ自体は通常時には有効なのですが、一旦その「善意」を逆手に取ろうとする人が現れた場合には、深刻なダメージを受けかねません。
そのことをしっかりと認識したうえで、もし万が一、悪意のあるメンバーをチーム内に抱えてしまった場合には、組織の健全性を取り戻すべく、フェアネスの意識を高くもって、意識的に「是々非々」を徹底する必要があります。
【終わりに】
これまで4回の連載を通じ、実際のPJ現場の例をご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか?
PJ事例自体は、連載第1回でお伝えした通りの「ドタバタ奮闘記」で、必ずしも何らかの正解をご提示しているものではありませんが、PJチームを見渡した時の状況を「人材タイプ」やその関係性で整理すると、チームに何が起きているのか理解・説明しやすくなることがイメージしていただければ幸いです。
IY
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