ダイバースリーダーシップ推進協会 ブログ

ダイバーシティと多様性を強みに変える組織作りコンサルティング 育成のプロ集団、ダイバースリーダーシップ推進協会のブログです。

“情報が回れば、組織は活きる。情報マネジメント再考” 目詰まりのない組織 #7 ~ アフターコロナも輝く組織でいるために ~

【情報が回れば、組織は活きる】

 前号からだいぶ時間がたってのメルマガ発信となってしまいました。多くの企業様が徐々に日常の事業・業務推進体制へとシフト・モードチェンジが進んでおられるせいか、ワークスタイル変革とそれにともなうマネジメント改革のご相談が急増しています。

  • どの程度出社させるべきか?
  • リモートワークを前提とした場合のマネジメントルールはどうあるべきか?
  • 一体感をどう確保すべきか?そもそも一体感は必要なのか?

など、本格的・本質的検討が始まっています。

 

 今一度「私たちはどうありたいのか?」といったニューノーマルの世界における“自ら”の再定義へと検討が深まっているケースも増えています。

 そのご支援のために、メルマガの発信を滞らせてしまい申し訳ありません。今号より、ほぼ定期発信してまいりますので、改めてよろしくお願いいたします。

 

 さて、前号では、ビジネスの前提が大きく変わり、進むべきゴール・正解が分からない中で、組織を動かす中核機能として心臓=「心理的安全性」の重要性を、身体における「心臓」に例えて論じた。

 アフターコロナにおいては、その心理的安全性(=心臓)の重要性が更に増していることを取り上げ、それは何故か?どう高まるか?について解説した。

 

 これまでの結論提示型の強いリーダーは通用しなくなり、組織にとって有益となる多様な個を見つけ・引き出し、多様性を事業推進力へと活かし・輝かせることができるダイバースリーダーが求められている。

 進むべき道やゴールが見えない世界において、自らが中心となってあらゆる情報を集約・共有し、思考を協働して、チームとして情報に付加価値をつける。そのプロセス・背景で創造された“情報”が共感と合意を生み出し、組織がオーナーシップをもって活動する。

 

 率先垂範という言葉もあるが、これからのマネジメントは組織の中心として、基盤としての役割を担い、この情報のマネジメントをしっかり行っていくことがより重要になっていくとDLAは考えている。

 

 そこで、今号ではこの情報のマネジメントを、身体で言う「血管」として捉え、その血管が目詰まりを起こしていないか?「情報伝達の目詰まり」について考えたい。

 

血管の目詰まり=死】

 「血管の詰まりは死に直結する。」

 仮に最悪の結果は免れたとしても、なんらかの器官(機関)・機能にダメージが残ってしまうことが多い。

 

 情報伝達が正常であれば、人は脳の指示にもとづいて身体全体が協調し、リズムに合わせダンスを踊る事ができる。まさに脳と身体全体が融合している状態だ。

 会社組織にとっての理想も同じで、あらゆる組織が協調して事業という名のダンスを踊る際、目詰まりがあってその動きについてこられない部署(=器官))があった場合、そこから事業(=身体)が崩れて行く。

 

 プールから海への事業の場の転換の話でも触れたが、指先から足先まで、末端の感覚を捉えながら、常に体制と活動に補正を加える事で、意図した方向に体系的な動きをとれるよう調整する。これこそが情報のマネジメントである。

 

 今日、私たちが直面している情報マネジメントの難しさは、扱う情報の種類が指数関数的に増え、且つ不確実性が高まっていること。にもかかわらず、意思決定の検証プロセスを高スピードで回すことが求められている。

 

 もっといえば、必要なすべての情報が何か?がわからず、どの程度確実か?が見えない中での仮説に基づいたサービスや製品、そして事業の組み立てを行っていかねばならないとういう、なんとも厄介な時代となっている。

 この状況において、血管(=情報伝達)に目詰まりを起こすことがどれだけ致命傷となるか、想像に難くないであろう。

 

 

これまでの市場分析の限界】

 「ファクトは何?」

 「事実なのか、意見なのか、明確に!」

 これまでの現状分析で、恥ずかしながら筆者も上司に指摘されていた。

 

 過去のある一定期間の状態を事実として把握し、確度の高い仮説を練って、市場に問う。そしてまた一定期間観測し、改善策を講じながら(願わくは)成長していく。

 この方法で課題を浮き彫りにし、その対応策を打つことの有効性・重要性は変わらない。

 

 但し、ある程度質の高い仮説を練ることができ(もちろん間違い=市場に受け入れないものもある)、それなりに時間をかけても市場、特に競合が許してくれるという環境が前提にある場合は、だ。

 

 しかしながら、その前提が成り立たないケースが増えている。むしろ、今後は成り立たないことがほとんどになるであろう。

 何故か?

 テクノロジーの急速な発展と、コロナによる生活様式の変化によって、提供価値革新のポテンシャルが一気に広がった。それにより、「何を実現したら市場に受けるのか?」、「提供価値を如何にして市場へ浸透させるのか?」の解を、市場分析のみから導き出すことは難しくなってしまったのである。

 

 

ロジックよりも、エモーション】

 あらかじめ申し上げるが、ロジックが不要と言っているわけではない。ロジックは最低限、事業性を検討する際に必要であるのは変わらない。単なる思い付きや投資が投棄にならないための、リスクマネジメントという意味でも非常に重要である。

 

 提供価値革新のポテンシャル拡大により、ユーザーは自身でも認識していないような価値に出会うことがある。

 その時には「そうそう、そういうの探してたんだよね」という従来の感覚ではなく、「心が動く」、「気持ちに響く」が先に起こる。

 そして、あとから何故そう思ったのかを整理し、購入意思決定を行うもしくは、購入意思決定の妥当性を担保するのである。そう、購入意思決定に「エモい」かどうかが重要となっている。

 ゆえに、テストマーケティングの結果や、市場分析から購入意思決定の要件を導き出すことが難しくなっており、身近にどう感じたかを赤裸々に伝えてくれ、しかも市場の縮図のような多面的な観点からの声が必要になったのだ。

 

 これまでユーザーの立場でものを見るということは、どの企業でもやってきている。

 しかし、ロジックサイドのコメントは把握できるも、エモーションサイドのコメントまでは把握してないケースが多い。

 主な理由としては、「必要だと思ってないので聞いてない・報告していない」「単なる感想で意味がない・ただの否定になってしまう」などの理由から、報告を遠慮していた、或いは言いにくいなどいろいろあるようだ。

 

 これからは、このエモーション情報が重要になる。

 つまり、マネージャーは、チームメンバー個々に、自身がユーザーとしてこのサービスや製品を手にしたときに、心に響いたか?どう感じたか?(可能であれば)どう感じたいか?どうだったらお金を払ってでも(いくらかは別として)手に入れたいと思えるか?など、感じたことを感じたまま伝えることが、非常に重要である事を示す。

 加えて、その情報こそが報告対象であることを明示することで、これまで報告書にのせる習慣のなかったこれら情報を、積極的に拾い上げることが肝になる事を理解してもらう必要がある。

 「こんな情報を報告したらまずいかも」から「こんな情報こそ報告しなければ」への意識のスイッチを切り替えられるケアをしなくてはならない。

 

 

【高速仮説検証サイクルの2つの輪】

 サービス・製品の妥当性検証がロジックでは限界があり、エモーション情報が重要である事は理解頂けたと思う。

 では、具体的にどのように検証すればよいか?である。

 

 これには、これまでの検証サイクルだけではなく、実際に顧客にサイクルに参加頂く必要があるのだ。

 つまり、ユーザーがどう感じたかはユーザーに聞いてみないとわからない。しかし、ユーザーもいきなり感想をもとめられても、購入意思決定に必要な要件を出すことはできない。

 

 すなわち、企業は組織の中で仮説検証の社内サイクルを回しつつも、何度もユーザーに当ててみる顧客検証サイクルも止めることなく回し続ける(下図、参照)=顧客にもサイクルに参加頂く事が必須となる。

 社内⇒顧客⇒社内⇒顧客といった感じで、顧客とともにサービス・製品を作り上げていくイメージになる。

 もうお気づきだと思うが、この社内サイクルをいかに顧客検証サイクルに近しいものへと昇華できるか、また、多量かつ解釈が必要な情報から、いかに有益な情報を捉えるか、すべてマネージャの情報マネジメント(+ダイバースマネジメント)にかかっている。



 

 

【情報のバトンパスゾーンをいかに減らすか】

 ここまでの話で、必要な情報(エモーション情報)が大量に増える予感は感じていただけたであろう。

 この大量かつ新しい情報が流れる血管を目詰まりなく維持すること、マネージャーの情報を吸い上げ送り出すポンプ=心臓としての機能が重要になることは分かっていただけたであろう。

 

 しかし、チームメンバーが意思決定情報の広がり、そのための自らの感情・解釈・意見の発信の重要性と実行の必要性を認識してくれたとしてもやはり、情報伝達のバトンパスゾーンで伝達漏れは起こる。

 そのバトンパスゾーンとは、文字通り情報を手渡すタッチポイントで、タスク・ピープルマネジメントのために存在する、支社・支店などとの物理的距離と階層構造(管理範囲の原則が必要な業務のために設定される括り)による隔たりにおいてエラー(伝達漏れ)が起こる。

 

 悪意はなくとも、階層や距離は情報が必ず欠落する要因となる。

 伝える側が重要だと思う情報だけあげる、エグゼクティブサマリとして要約化(要約は伝え手が判断して取捨選択する)された情報をあげる。タスクやピープルマネジメント情報など伝達サイドの解釈、判断が介入する。

 厄介なのは、この解釈・判断がこれまで通りでよいものも多数ある。

 階層や場所にかかわらず共有すべき情報とは何か?それはどのように共有するのが適切か?について明らかにし、同じデータベースで議論や意思決定ができるようにしておくことが重要である。

 

 情報伝達の目詰まりが怖いのは、その情報を知らされていないだけに、目詰まりが起きていることに気づけないことにある。それに気づいた時は、大方、何らかの事件が起きてからとなってしまうことが怖い。

 是非、読者の皆様それぞれで、自社事業に当てはめてみて、必要な情報とは何か?その情報をどう把握すべきか/どうしたら把握できるようになるか?一度、検証してみてはいかがであろうか。

 

 次号は、この情報マネジメントとその前提の変化を受けて、いかに意思決定の方法を最適化していくか、「意思決定の目詰まり」について取り上げたい。意思決定を正しく行うためにも、この情報のマネジメント、血管の目詰まりを解消しておくことが重要である。

 

 

 DLAでは、組織の多様性を引き出すリーダーを「ダイバースリーダー」として定義し、これからのマネジメントのカタチとして、このダイバースリーダーの考え方と行動を組織にインストールするお手伝いをしています。リモートワークを始め、マネジメントの前提が大きく変わる中で、業務・人・情報のマネジメントをいかに最適化していくか、課題をお感じになられている企業様がございましたら、お気軽にご相談ください

 

T.Y

 

 

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“組織の「心臓」、心理的安全性の目詰まりが組織を殺す” 目詰まりのない組織 #6 ~ アフターコロナも輝く組織でいるために ~

【循環機能(=現場に眠る情報の吸い上げ)の目詰まりは組織を殺す】

昨年より開始した「目詰まりのない組織 ~ アフターコロナも輝く組織でいるために ~」のシリーズ、前号では戦略・施策(頭)と、その実行・実現(ボディ)をつなげるエンゲージメントを「首」とし、その目詰まりについて論じた。

 

テレワークが取り入れられた新しい働き方へと変わっていく中で、エンゲージメントをいかに維持・向上させていくか、「カイシャという”場”」の再定義・再構築に焦点を当て、考えた。

 

言うまでもないことだが、カイシャという“場”を再定義し、それに整合する形へ制度を組み替えただけでは足りない。

運用、つまりマネジメントも、アフターコロナの世界に適応したものでなければならない。

 

Visionを示し、方向性を打ち出し、組織に浸透させ、実行を働きかけ、支える。そのボトルネックになる様々な障害についても対処することが求められる。

新鮮な血液を身体の隅々まで送り届け、組織を活性化させ、汚れた血液を回収する。さながらマネジメントとは会社組織の「心臓」のような機能である。

 

今号では、この組織というボディを駆動する中心的・中核的機能である、「心臓」=心理的安全性の目詰まりについて考えたい。

 

コロナにより、私たちの暮らし、ビジネスの前提が一気に大きく変わった。

 

この新前提、アフターコロナの世界において、どうあることが企業・事業に成長をもたらすのか、この成功のファクターについてはまだ分からず、組織の五感・六感を総動員して、仮説構築と検証を繰り返すことで成功へと近づいていくことが必要であることはすでに述べた。

逆説的に言えば、仮説検証サイクルの動力であり、中核であるマネジメントに目詰まりが起きた瞬間に、この循環は止まる、もしくは意味なしサイクル(ただ回わすだけ、もしくは悪い方へ回っていく)になることは想像に難くないだろう。

 

アフターコロナにおける企業運営・事業推進とは、見えない新大陸を目指し、大海原を進むことであり、日本企業の専売特許である“オペレーショナルエクセレンス”だけでは通用しない。

 

ビフォアコロナから永遠のテーマのように “マネジメント強化”が求められてきたが、それでもほとんどの企業はそれなりに成長できていた。しかし、現在は違う。

マネジメントの課題が致命傷となる前に、早急に手を打つ、アフターコロナ対応型マネジメント(現場に眠る情報の吸い上げ)への進化が必要なのだ。

 

 

【結論提示型の強いリーダーシップの終焉】

強いリーダーが答えを明確に示し、現場チームは粛々とその実行・実現にまい進し、成果をあげる。そのリーダーは優秀とされ、評価されてきた。

周囲は、そのリーダーがその時言ったことだけではなく、その人が言うことすべてが正しいことであるかのように思い始める。

 

だいたい正解なものを作り、テストマーケティングや市販後のファインチューンでスピーディにニーズにあったものへと仕上げ、収益をあげる。非常に効率的な組織・事業運営であり、成功モデルの1つの型と言えよう。

 

ビフォアコロナでは、それでよかったし、それがよかった。しかし、ビジネスの前提が根本的に変わったアフターコロナの世界において、これまでの経験や考え方は通用しない。通用しないどころか、それに頼ることはむしろ危険である。

 

過去の情報や個人の嗜好性に基づき“優秀な1人”がロジカルに決めたことを、他のみんなが粛々と実行するという方式は、負けるギャンブルをしているようなもので、今後は最も非効率なやり方に成り下がる。

 

では、過去ではなく、製品・サービス開発直前にニーズ調査を直前にしっかりやり、その情報に基づいて打ち出された答えであればよいのではないか?

残念ながら、この方式でも十分ではない。

顧客や市場自身も正解を分かっているわけ“ではない”からである。

 

今までのモノ・コトでは“ダメである”ことは分かっている。一方で、じゃあどうだったらよいのか?どうしたらお金を払ってでも買うのか?については、顧客自身もわかっていない。

買う/買わないを決める前のニーズ調査と、実際の購買動機とのギャップが大きくなってしまっているのだ。

 

 

【組織を輝かせるダイバースリーダー】

このように、過去のデータも当てにならない、顧客や市場自身もありたい姿を模索している中で、真に求められる製品・サービスを生み出すには、顧客や市場と社内に眠っている意見の継続的な対話を通じて作り上げていくしかない。

 

そこに求められるマネジメントとは、ダイバースリーダーである。

 

ダイバースリーダーとは、DLAが定義するリーダーの一類型であり、簡単にいえば、多様化されたチームで個の特徴を最大限に発揮させ、活かすことで成果を創出するリーダーである(詳細は「新時代に必要な11人の戦士 〜人材活用・組織分析の新たな視点〜」著DLAをご覧ください)。

 

チームをまず一番小さな市場とし、職位や年齢、属性にとらわれることなくメンバー全員から1人の顧客として感じたことや思ったことを引き出し、その情報から何をなすべきか、チームみんなで創っていくということが大切になる。

 

前述のような結論提示型の強いリーダーシップの下では、統制が重視され、ちゃんと指示に従うこと、考え方が近いことという“纏まっている”ことが重視されてきた。

今後はこの真逆で、それぞれが違うことが重要であり、この違い、多様性をいかにマネージできるかがマネジメントに求められる必須の要素となる。

 

あらゆる先入観を、自分はもちろん、チームにも持たせず、「真っ白」「真っ更」を維持し、ストレートに意見・情報を出させるために「権威」を作らせないことで、正しい情報を正しく認識し、もっとも正しい可能性が高い答えを組織でだせる(正確には組織でしかそれを担保できない)ことが重要になる。

 

しかし、そこには大きな壁が存在し、眠っている多様な意見を如何にして吸い上げるか?それには、意見を言える環境=安心して少数意見を言え、聴く側も偏見なく取り入れられるか?という心理的な安全性が求められる。

 

そのために、マネジメントはまず何をすべきか?以下にその実践のための一例をあげた。

 

  1. 「引き出す」:異なる考えを持つこと、意見を言うことを奨励し、評価・批判を排除する

 メンバーの意見、特に自分の意見と異なったり、懸念を示す意見にどう反応しているだろうか?

自分の意見に賛成するような意見や妥当性を補強するような意見にはウキウキ・ワクワク反応し、反対・懸念意見には強い語気や即座に言い返すような反応をしていないだろうか?

 

これを続けると、心理的安全性が損なわれ、イエスマン面従腹背しか生まれない。

上司・部下間に限らず、これはメンバー間でも同じである。

 

多様性を活かすには、まず多様性が発揮される環境を整える必要がある。それが、まず意見を率直に言えるチームであること。

そのためには、意見を出し合うことと、それを評価することとを同時にしないようにすることが必要だ。

 

意見を出し合うタイミング(発散)では、次項#2の「探し出す」に皆で没頭し、そのうえで意見=案の評価へと移る。これをしないと、発信者に、意見の否定・反対=自分の否定・批判と伝わってしまい、意見を言いにくい環境が醸成されてしまう。

 

 

  1. 「探し出す」:コミュニケーションは宝探し。自分と違うところ探し、「なぜそう思うのか」を捉える

メンバーから相談や報告を受けた時にどう反応しているだろうか?

「そんなことは知っている/どうでもいい」と思いながら聞いていないだろうか?言葉に出さなくても、あなたの意識を超えた態度・表情・雰囲気で相手には伝わっている。

 

意見や話を聴かない(「聞く」ではない)“言っても無駄な上司”には、どんな有益な情報や意見も言わなくなってしまう。

仮に自分が既に知っていることであっても、相手が何に着目したのか、どうしてそう思ったのか、そこから何を感じたのかなど、自分と違うことはないかというところを探しながら聴くことで、マネジメントとしての視野・思考の広がりを部下がつけてくれる。

 

これもまた、上司・部下感に閉じた話ではない。誰かが意見を言った時、みなで「それ、どういうこと?」という姿勢で自ら理解しに行くことが、チームの多様性を引き出すことにつながり、結果として自分の頭には存在しなかった宝物が発見できる可能性が高まる。

 

 

  1. 「議論する」:情報の独占を防ぎ、非対称性による権威化を防ぐ

情報をオープンにしている/させているだろうか?

意図的に共有させるようにしておかないと持ち主に抱え込まれ、単なる過去情報だったものが知識化(個別具体の事象が一般化され、不変の真理であるかのような誤った解釈がおきる)され、そこに権威が発生する。

 

全ての事象は、「前提」、「論理/事象の展開」、「結論」の3セットで成り立っているが、「前提」抜きで情報が流通してしまうことが多いように筆者は感じる。

それにより、その場合はこうといった、検討無き結論の当てはめ(例「組織はフラットな方がいい」)が起き、妥当性検証の機会が失われ、せっかくメンバーが意見やユニークな観点を出してくれても活かしきれない。

 

この3つさえできていれば、十分だとはいえないが、この3つがないところに、十分な心理的安全性はないと断言できる。

 

組織のあらゆるセンサー=メンバー全員が敏感に情報を感じ・捉え、組織に共有し、偏見なく認識・判断する。アフターコロナを見据えて、マネジメントはこの状態を早期に作り出す必要がある。

 

マネジメントが成長の致命傷ではなく、輝く組織の原動力であり続けられるように、DXが進まない、今までと大して変わらないことしか出てこないと気になっている方、自身のマネジメントやチームのマネジャーの行動を、今一度自組織における心理的安全性を点検してはいかがだろうか?

 

 

DLAでは、組織の多様性を引き出すリーダーを「ダイバースリーダー」として定義し、「人の特徴を良し悪しではなく、強弱で把握できる」といった行動特性を明らかにしている。

 

ダイバースリーダーだけでなく、アフターコロナの環境下で輝くチームを構築するために必要な「11の人材タイプ」を導出した。DLAではこの人材タイプを用いた「11type診断」もご提供している。

 

「組織の心臓」の目詰まりに課題・懸念をお持ちの企業さま、アフターコロナに向けて企業・事業強化をご検討の皆様、是非、人材の総点検から初めて見はいかがだろうか?お気軽にご相談ください。ご連絡お待ちしております。

 

Y.I

 

 

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“戦略が動かない・指示が実行されない!” 目詰まりのない組織#5 ~アフターコロナも輝く組織でいるために~

【エンゲージメント=首の目詰まり】

前号では組織の「目、耳、鼻、口」、すなわち情報収集における目詰まりについて述べた。

組織として、とりわけ意思決定の場で、不都合な真実も含めて“事実”を把握することの重要性と難しさ、さらにはその実現のヒントについて触れた。

この情報収集の目詰まりが解消されることにより、適切な意思決定が実現し、有効性の高い戦略や施策の策定が可能になる。

 

この情報収集と戦略・施策の策定は、人間の身体で例えれば「頭」で行われることに位置づけられる。

事実情報が組織として集約され、分析され、活かされ、戦略や施策として意思決定される。次は、この戦略や施策を“動かす”番となる。

 

頭でできあがった戦略・施策を、胴体・手足(以降「ボディ」)へと伝達し、実行するわけだが、そこにも目詰まりが発生する。頭とボディをつなぐ「首」の目詰まり、つまり計画と実行をブリッジする“エンゲージメント”の目詰まりだ。

 

会社と個人の関係が主従関係からパートナーシップへと変わりつつある中、コロナによってテレワークが一気に広まり、私たちの働き方が大きく変わった。

パートナーシップという対等な関係、すなわち、サラリーマンの会社からの心理的独立の進展に被さるように、「会社に行かない」、「仲間と会わない」、「会議以外ではほとんど話さない」など、会社との距離が生まれる方向への力学が働いた。

会社に愛着を感じ、所属することに価値を見出し、貢献しようと思うエンゲージメントがなければ、どんなに有効性の高い戦略・施策が策定されたとしても実行はままならない。

 

これまで、戦略・施策の実行において、エンゲージメントの問題も含め、会社という「場所」(=箱)に物理的に集合することを前提に、その重要性や課題、その解決の議論が展開されてきた。

“所属”していることが、物理的環境によって担保され、その価値を感じることができたのだ。しかし、この前提が大きく変わった。

出社しない、集まらないという“所属価値”を感じ難い働き方となる中で、いかにエンゲージメントを維持・向上していか、今号では考えてみたい。

 

 

【「カイシャって何?」組織に与える会社の影響】

恥ずかしながら、組織・人事のコンサルタントでありながら、これまで筆者は、「会社=仕事場」程度にしか考えたことがなかった。

しかし、コロナ禍で、ほとんど出社しない日が続き、在宅という1人職場で仕事をするという経験を通じ、「会社」とは何なのだろうかと考えさせられた。

「組織から“場”としての会社を引き算した場合、私たちはどのような影響をうけるのだろうか?」と。

 

組織を成り立たせる3要素として「共通目的」「協働意欲」「コミュニケーション」というのがある(バーナードの組織論)。

会社という“場”の存在を前提としなかった場合でも、「共通目的」は会社や働く個々人の目指すもの、共感しあえるものという性質上、大きな影響はないだろう。

しかし、「協働意欲」「コミュニケーション」は、同じ職場で働いていた、お互いが見える場で働いていた時と変わらないというわけにはいかない。

 

テレワーク下では、「コミュニケーション」は、共通目的の達成のための合目的なもの、予定されたもの中心となる。

一方で、偶発的・自然発生的なコミュニケーションは失われる。

挨拶をする程度の「会う」という最低限のコミュニケーションすらできなくなり、組織・チームとしての一体感の希薄化が起こる。これについて大手企業の人事の方がおっしゃっていた。

 

「テレワークで一体感は確実に減少している。それどころか不安や孤独感による疑心暗鬼がチームをバラバラにしてしまう」と。

会社という場の存在が無くなるだけで、これだけの問題がおきてしまうのかと、場の重要性を考えさせられるコメントだった。このような状況では、協働意欲など生まれるはずがない。

 

 

【モチベーションとエンゲージメント】

このように、コミュニケーションの偏りや、そもそも取り難いという状況が、チーム内のつながりの希薄化や1人仕事感を助長させ協働意欲(共通目的達成に向け、仲間と頑張り、相互に支援し高めあう気持ち)を減退させる。

そして、この協働意欲の減退が、コミュニケーションをとろうと思う気持ちを減退させ、さらにコミュニケーションの希薄化を生み出すというデフレスパイラルを発生させてしまう。

この協働感のなさ、仲間不在感のデフレスパイラルが、組織への所属価値を下げる。

 

厄介なのは、この所属価値が低下しても、モチベーションが低下するわけではないことだ。

自分がやるべき作業はやるという意欲と義務感、場合によっては達成感が下がるわけではない。

それぞれが、担当作業をサボることなく、しっかりやるが、エンゲージメントは低いという状態が起こる。

 

戦略・施策は組織全体での協働・協調によって実現されるもので、個の作業の足し算では達成しえない。

 

このモチベーションが高く、エンゲージメントが低い状態とは、作業の主語も目的もすべて自分になってしまい、目的に会社や組織貢献が出てこず、協働・協調が生まれない。

会社の生産性は高まらないが、個人の忙しさや効率性は高まるというテレワークの問題はここにある。

 

すでにお気づきかと思うが、ここに悪者はいない。新しい働き方の構造的な問題によって、戦略と実行(業務遂行)の間にある、人の気持ち、エンゲージメントに目詰まりを起こしてしまうのだ。

 

 

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【カイシャという“場”の再設計】

テレワークを中心とした新しい働き方のメリットを享受しつつ、いかにこの目詰まりを解消していくか?これこそが、会社も社員もハッピーになるためにクリアすべき問題である。

 

ここで重要な問い、初めの一歩となる問いはやはり「なぜ、出社するのか?」だ。

 

カイシャという場へ、何をするために来るのか、この目的を明確にしたうえで、カイシャでやるべきことと/やらないこと、出社タイミング(出社日数と出社者)、デジタル化も含めた業務プロセス、さらにはオフィスのレイアウトまで1つの考え方に基づいてロジカルに設計・運用されることが求められる。

 

ここに唯一の最適解はなく、業務特性や業務分担の在り方や構成メンバーの習熟度・自立/律度、情報共有の難しさ(複雑性とインフラ)、マネジメントスタイル、組織のステージなど合理的な視点と、私たちはどんなチームでありたいかという思いから議論していくことになる。

同じ業界や業態であることにこだわることなく、違う業界の考え方だったり、考え方の近しい企業のやり方を取り入れるのも、新しいエンゲージメントの目詰まり解消には有効であろう。

 

最後に、この検討はWithコロナに求められた“出社しなくてもよくすること”が目的ではない。

あくまで、戦略・施策の実現のための組織・チームづくりと最適な働き方を実現することが目的であることにご注意いただきたい。

 

 

DLAでは、戦略と実行をつなぐエンゲージメントの向上に向け、新しい働き方の設計から、それらを支える諸制度の設計・運用のご支援まで幅広くご提供しております。エンゲージメントの目詰まりに課題・懸念をお持ちの企業さま、お気軽にご相談ください

 

T.Y

 

 

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