【グローバルプロジェクトの成功を左右する“適所適材”~“マーケット・ダイバーシティー”への理解】
【ローカルを無視したグローバルプロジェクト】
先日、武田薬品工業が、アイルランドのシャイアーを7兆円で買収したことは、衝撃的なニュースとして伝えられました。またソフトバンクグループのSprintとT-Mobileとの合併も記憶に新しいところです。
多くの企業が世界レベルでの大規模なグローバル再編を加速しており、この流れは様々な業種で起こってくるのではないでしょうか。
かく言う筆者も多くのグローバルプロジェクトを経験しましたが、実情は多くの混乱が起きています。
中でも業務プロセス改善やシステム導入は、国ごとのビジネス環境、商習慣、規制要件の違いから困難を極めるケースが多くみられます。
例えば、
- グローバルでの改善プロジェクトで、本社から提示された業務仕様が、現地の業務とマッチせず、運用のリスクヘッジや規制案件が担保されていない。
- テンプレート化されたプロジェクトスキームは、分かりやすくて良いのだが、グローバルテンプレートと言いながらも中身は、アメリカテンプレートだったり、日本テンプレートだったりとプロジェクト立案国の業務・システム仕様などが主になっており、現地のビジネスシ商習慣を無視したスケジュール、影響を過小評価した大幅変更などから現地の負荷が膨大となる。
- 本社レベルで、プロジェクトに参画するベンダをグローバルパートナーとして確定するが、プロジェクトが展開される各国で本社が期待しているレベルのサポートクオリティが、現地にて同ベンダから受けられない。
- 上記のクオリティーGAPを埋めるための採用予算を本社で組んでいないため、現地法人の予算にて負担する事が多く発生する。
などなど。
また、上記の問題がありながらも、本社の人間は現地の意見を全く聞く姿勢もなく、現地のプロジェクト責任者は言いなりになってしまっているケースもあるように見られます。
【グローバルでの適所適材=マーケット・ダイバーシティ】
グローバルプロジェクト(全社プロジェクト)にこのような問題が多くみられる原因として、プロジェクト立ち上げ時の“適所適材”を考慮していない事と、“マーケット・ダイバシティ―”(展開各国の多様性)を把握せずにプロジェクトがデザインされ、本社の思い込みのままプロジェクトが進められる事が多いように思われます。
適所適材:
1.社外内のプロジェクトリーダー
グローバルプロジェクトで人をアサインする際に重要なのは、プロジェクト経験(業務改善経験や特定システムの導入経験)だけでなく、そのプロジェクトを他国にて適用した際にどのような課題が起こりうるのかを検知できる力やマルチリージョンプロジェクト経験が必要となります。
グローバルプロジェクトの推進者やリージョンリードには、各現地国のカウンターパートナーのコミュニケーションスタイル、国民性などをある程度理解した上で、事前に注意すべき商習慣や想定課題などを引き出す力が必要となります。
また、現地でアサインするプロジェクトリーダーも本社の意向やコミュニケーションスタイルを理解し、本社プレッシャーに負けない・言いなりだけにならないためのコミュニケーション力が求められます。
2.プロジェクトパートナー/ベンダセレクション
グローバルベンダ(海外展開しているシステムコンサルティングやベンダ)の弊害として、必ずしもプロジェクト展開先の各国でサービスや人材が、同じクオリティーで用意されているとは限りません。
ベンダによっては、本社(本国)では戦略・業務コンサルティング、システム導入コンサルティングからシステム運用サポートをシームレスにサポートできる体制にあるが、サービス主要国以外の国ではシステム運用が主流サービスの場合もあります。
ベンダ選定時には、スケーラビリティを考慮しながらも、そのベンダのリージョン別の主力サービスを理解し、必要なサービスが弱いリージョンでは他のベンダからもサポートを受けられるようなベンダ採用方針や予算の設計が重要となります。
マーケット・ダイバーシティー:
- ビジネス商習慣
国や地域によってビジネス環境、商習慣が事なる事は言うまでもありません。 プロジェクトを設計・推進する上でのコストやスイッチオーバーのタイムランを可能な限り低減する事が重要ですが、プロセス変更やシステム変更のプロジェクトにおいて現地のビジネス商習慣の理解、特に外部(政府や取引先など)との交渉・調整が必要な場合はそのリードタイムを考慮し、プロジェクトプランと推進方法を選定する事が重要です。
- 規制要件
国によって守るべき法律や規制が、その国で事業をするに際し業務プロセス等に影響を及ぼす事は言うまでもありません。 複数の国に展開するグローバルプロジェクトにおいてプロジェクトによって変更される業務やプロセスにて規制要件が満たされているか?満たすためのシステム仕様が担保されているか?テンプレートでカバー出来ないプロセスへの工夫をどうするべきか?などをあらかじめ現地業務担当と調整し、ワークアラウンドの合意をする事が必要となります。
このような事は、変革・変更・標準化などの全社プロジェクトでは当たり前のように直面する課題ですが、多くの場合はそれを十分に考慮せずにプロジェクトが立ち上がり、進んでいき、“Show Stopper” となるケースが多いです。 DLAでは、マルチカルチャー、マルチマインドセットが交差するプロジェクト設計サポートや推進アドバイスを行っております。 Diversifiedされたプロジェクト推進でお困りの際には、一度ご相談ください。
M.S
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