成功を産む経験の積み方
今日は、最近筆者が体験した、当初予期しなかったタレント発掘の事例をご紹介したいと思います。これから迎える1億総Transform時代のタレント育成のヒントになるものと思います。
人間は経験によってスキルや物の考え方が形成されます。それが良い経験であれ、そうでないものであっても同様でしょう。
良い経験であれば、所謂成功体験となって、その後の人生で大きなターニングポイントになる知識や、スキル、意識や考え方の基礎になる出来事として位置付けられるでしょう。
また、反対に、結果的には失敗を味わうものであっても、成長の鍵を掴み取る事ができれば、貴重な体験となり、糧となって残ることでしょう。
ネガティブなままであれば、トラウマのようなものになってしまうこともあり得ますね。
【誰もが才能を持っている事を肝に銘じる必要性】
この1年くらいの間で筆者が経験した何件かのプロジェクト実例の背景はこうです。
昨今の環境変化の影響で、SNSやAI、IoTと言った新たなテクノロジーを活用した自社の業務改革や意識改革のプロジェクトが増えて来ています。
そこでは、これまでとは、メンバーとして選出されるべきタレントの質が変わってきています。
今までの社内プロジェクトと言うと、経験豊富なリーダークラスや、将来の幹部候補と言われるような所謂エース人材がメンバーとして選ばれることが圧倒的に多かったと思います。
その方達は、一方で、上記のような新たなテクノロジーに精通はしていなかったり、現場の実務から離れて久しかったりと、昨今のプロジェクトでは足枷になることが多いのを、コンサルタントとして実感していました。
そこで、私が最近アドバイスさせて頂く案件では、必要なテクノロジー・現場の知識を持つメンバーを後から追加したり、ヒアリングしたりと二度手間になる事を避け、最初から、それらを知る人材を含めてメンバーを構成するようにしています。
選ぶ基準を変えて人選をした結果、顔ぶれは、現場実務を長く経験したベテランの事務職の方々だったり、入社1年目の10代の方、入社3〜5年目の20代前半の製造ラインの若手チーム、パートで働いている方など、実に多様なタレントから構成されるようになりました。
学歴、職歴、社会人としての年数はバラバラですが、”実務に最も詳しい人”、
”SNSを普段よく使っている人”、”自社の色に染まりきっていない人”などテーマに応じて様々な基準で選ばれた人々は、これまでの”優秀人材”とは良い意味で、全く異なる考え方、ものの見方をします。
問題解決で課題の選び方が斬新であったり、マーケティング分析の観点が鋭かったり、顧客の気持ちに敏感であったり、これまで会社で常識とされてきたものにとらわれず、自由な発想で驚くべきアウトプットを出しています。
【才能を最大限に活かす要素】
どの場合もプロジェクト責任者が驚きを隠せず、期待していなかったタレントが予想をいい意味で裏切っているのです。
しかし、良い種が見つかっても、それだけでは本当の成果に繋げられません。
成果を本物にするために3つの環境を整備しています。
1つ目の環境整備:負荷をかけず、成果を素早く出せる体制
現業を持つ社員が、プロジェクトベースの仕事に選出され、プランニングや分析に長い時間を費やすことは、負担が大きいものです。
その上、最近のビジネス環境は変化が激しく、殆どの場合、長い時間をかけるメリットは多くありません。
できるだけ小さくても、結果、成果を素早く確認できることが不可欠です。
また、メリハリをつけ、意味のない定例会議を開くのではなく、社内でのチャットなどを活用し、気になることはタイムリーに確認する等、メンバーの負荷(実働的、精神的)を下げ、楽しめるようにすることが重要です。
2つ目の環境整備:チーム編成の選び方
エース人材ばかりをプロジェクトメンバーに選んできた場合、どうしたら新時代の人選ができるのか、コツがわからないこともあるでしょう。
しかし、構成員の選び方が何より重要です。
最も重要なのは、対応しなければならない課題を偏見を持たずに見ることができる視点と前向きで柔軟な思考を持つ人材です。
それをベースとして、チーム編成に不可欠な5つの役割を満たす人材を選ぶことが必要です。5つの役割とは何か?ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。DLAでは、この5つの役割を含め、求められるプロジェクトに応じたスキルやマインドセット、行動特性を持っているかを、様々な判定プロセス(実務観察、実務ケース、初見の課題に挑むエクササイズ、共同作業による制作課題など)で精査するノウハウを持っています。
3つ目の環境整備:メンバーを孤立させない(=エースがサポート要員として参画)
化学変化を起こすためには、新種の異端人材だけでは難しいものです。そのような人材は、ピンで見たときには、十分な業務知識や社内の情報、経験、実際にものを動かすための人脈が少ないからです。そこで、これまでのエースやリーダークラスに、アドバイザーとして参加してもらうことで、メンバーの尖った思考を孤立させずに活かすことができるのです。
先日もとあるプロジェクトで、双方の素晴らしいハーモニーが目の前で繰り広げられ、素晴らしいアウトプットを得ることができました。
【良い経験を積ませる環境】
最後に、経験が悪影響を及ぼす場合について述べておきたいと思います。
最も害になるのは、誤った方法や不正なルールに基づいて、無理を通すような経験です。
無理を通して己に有利な結果を得られる経験をすれば、2回目以降は当たり前になり、道理を捻じ曲げた無理を正当化するために、さらなる無理を通す事を繰り返すこととなります。
また、難しい壁に直面した際、創造性を発揮するのではなく、抜け道を探すようになることも懸念されます。
昨今の日本を見ていると、憲法の独自解釈、会計検査院の報告を無視する政治、長年不正な手続きで検査してきた企業倫理、不祥事が絶えない相撲協会など、この「無理を通す経験」が害をなしているのではないかと思わされる事例によく出会います。
変化の激しいこれからの時代を生き残るためには、組織が一丸となって制約を乗り越える創造性を発揮できるタレントを発掘し、イノベーションを起こせる環境を作ることにあるのだと思います。
イノベーションを起こす環境整備の方法についてご興味のある方はぜひ、お問い合わせください。
金杉リチャード康弘
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