シリコンバレーに学ぶ無意識の偏見のなくし方
人間がもっている偏見は、ダイバース・リーダーシップ推進協会が取り組むもっとも重要なテーマの1つであり、本メルマガ・ブログの過去記事の中でも、たびたび取り上げています。
中でも、無意識の偏見をなくすには アンコンシャス・バイアスに打ち勝つ方法 の記事は、最も多くの方に読んで頂いた記事で、この問題に対する注目度の高さを我々も実感しています。
ところで、アンコンシャス・バイアスという言葉は、まだ日本では一般的ではありません。
無意識の偏見、といえば、意味は通じますが、日本では、そもそも偏見について、社会として考える機会が少ないということもあって、偏見についてもう一度考えることからこの記事を始めてみたいと思います。
「偏見」の中の「無意識の偏見」
偏見というのは文字通り偏ったものの見方のことで、客観的根拠がないにも関わらず、特定のカテゴリ(カテゴライズさえ勝手にしていることも多い)の人々やものごとに対して差別的な意見や感情を持つことです。
大統領選で、メキシコ人は犯罪者だなどと連呼したトランプ大統領や、その支持者の方たちが公然と口にする「移民=悪」説などは、表出した偏見。
これは、他人に主張するほどに、本人たちが信じ切っている「意見」であり、変節を促すのは大変な作業になります。
事実、大統領選で、民主党側や、アメリカメディアはこぞってこの「意見」を叩きましたが、彼らはより声高に「意見」を述べただけでした。
この記事で取り上げる アンコンシャス・バイアス、”無意識の”偏見は、誰もがこころの中にもっているものであり、上記のような表出したものとは分けて対応するべきと考えています。
無意識の偏見は、無意識であるが故にまた、戦いづらいものです。
しかし、この無意識の偏見は、組織内に蔓延するにつれ、同調圧力を生み、異なる意見が言いづらい閉塞した土壌を生んだり、問題に対応する際の選択肢を知らず狭めたり、と意外とやっかいなものなのです。
筆者が働いたことがあるシリコンバレーの企業では、この無意識の偏見に、社をあげて取り組んでおり、面白い効果を生んでいましたので、ここでご紹介したいと思います。
全社員の共通言語をつくる。でもユーモラスに!
同社では、ダイバーシティを最も重要な経営戦略と位置づけており、ダイバーシティの取り組みの一環として、アンコンシャスバイアスのトレーニングの受講が全社員に義務付けられていました。
日本でも、バイアス対策のトレーニングを社員に課する企業は増えていますし、当協会でもご依頼を頂いています。
が、ミソはそのやり方です。
偏見というと、シリアスな問題です。
ともすると、道徳の教科書のようなトレーニングになりがちですが、それでは受講者側は、内心「ちょっと退屈」と思って身が入りづらくなるか、それを防ごうとして危機感を煽る内容にすると、不要に怖がってしまうかどちらかになりがちです。
同社のトレーニングでは、参加者は、沢山のロールプレイをします。
ロールプレイでは、無意識にバイアスを持つ側、持たれる側、それを指摘する側など、異なる立場を順番に経験しながら、誰もが持ちがちな偏見を見つけ出す作業を大量にします。
ロールプレイに多くのルールはありませんが、1つだけ重要なこととして、偏見を指摘される立場になったときに、指摘されたらかならず感謝すること、と指導されます。
参加者たちは、インストラクターが見本のロールプレイで、(日本語で言うと)「捕まりました!失敬!ご指摘ありがとう!」とでも言うようなセリフで感謝するのを見て、皆、真似し、ユーモラスに指摘を感謝します。
ロールプレイは、リアルであるとはいえ架空の台本で、参加者が指摘しあったからといって傷つくことはありません。が、シリアスな問題に、ユーモラスに指摘を感謝する雰囲気が生まれることで、問題を話し合うハードルがどんどん下がっていくのです。
このトレーニングの効果もあって、同社では、日常会話の中でも、偏見があるたびに、ユーモラスに指摘し、それに感謝することが日常風景となっています。
シリアスな問題を話し合うハードルを下げる
偏見というものは怖いもので、ひどくなると、民族紛争のように、人を殺してしまうことさえあります。
身の危険に関わる話題は、人は避けがちになりますが、こうして、身近なものからユーモラスに解決していく、話し合いのハードルを下げていくことが重要なのではないでしょうか?
向き合わないでいては、解決もしないのですから。
ところで、表出した偏見については、ハイネケンが少し前に、素晴らしいCMを作り、世界中から賞賛を浴びました。
こちらも、ひとさじのユーモアのようなものが感じられます。
こちらはTABILABOさんのサイトでまとめられた記事ですが、おもわずうなる展開です。
是非ご覧になってみてください。
B.K
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