ダイバースリーダーシップ推進協会 ブログ

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手放す勇気を持て(シンギュラリティ時代の人材マネジメント 第2回)

【手放す勇気を持て】

 

前回に引き続き、これから本格的な到来をするAIの時代、

シンギュラリティ("技術的特異点レイ・カーツワイル時代の人材マネジメント第2弾です。

(合わせて前回内容も宜しければご一読ください。近々ウェブサイにもバックナンバーをアップ予定です)

 

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プロの領域とピュア視点を持て(シンギュラリティ時代の人材マネジメント第1回)

【プロの領域とピュア視点を持て】

 今回から拙著パートに於いて、これから本格的な到来をするAIの時代、そしてその1つの大きな変化点として、

シンギュラリティ("技術的特異点=提唱したレイ・カーツワイルの定義では、「100兆の極端に遅い結合{シナプス}

しかない人間の脳の限界を、人間と機械が統合された文明によって超越する」瞬間のこと" *Wikipediaより)時代の

人材マネジメントについて、シリーズで考えてみたいと思います。

 

 因みに、間違った解釈(2045年人工知能が人間の脳を超える)をしている例が多いですが、平たく言えば

「人間はAIと合体して、もっとすごくなる」という意味ですね。

 

 その第一弾として、まず、1人の職業人、個人としての資質をテーマにしてみたいと思います。

 名付けて ”プロの領域とピュアな視点を持て” が今回のテーマです。

 

 【昔から人はツールで進化する】

 ご存知の通り、太古の昔より人類は様々なツールを開発し、そのツールを活用することで人生を進化させてきました。

 色々な道具を活用して狩猟社会を形成し、時代を経て農耕社会へと移行、そしてやがて工業化社会、更に現在の

情報化社会へと。この変化はすなわち、道具、知識、テクノロジーという言わばツールを進化させ、その活用を通じて

進化してきた人類の歴史の変遷そのものです。

 

 そして次に迎えるのが、AI、IoTに象徴される更なる情報化時代の進化によって、人間の脳のシナプスを超える時代が

訪れるというものです。しかし、現在でも我々は様々なビッグデータを脳の代替機能に活用しています。 

 例えば、スマホの辞書、時刻表、住所録、ナビ、レストラン検索などなどは非常にわかりやすい例だと思います。

 

 日頃あまり意識せずに活用していますが、存在しなかった時代を思い出すと、大変な労力を削減できていますね。

別の手段で調べていた時間を完全に省き、別のクリエイティブな活動に活用することが可能です。

これこそが、カーツワイル氏が言うところの人間はAIと合体して、もっとすごくなる」と言うことではないでしょうか。



 【備えるべき変化は?】

 では、現在を含めた近未来はどんな変化に備える必要があるのでしょうか

 それを紐解くことで、あるべき人材マネジメントの方向性が見えてくると思います。

 

 確実に起こる変化は、

 

 情報の量が幾何級数的に増えること、

 見えなかった情報が可視化(質の向上)できること、

 テクノロジーの進化が細分化・専門化すること、

 そして、一部で最も危惧されていることは、

 これまで人の手によって行われてきた仕事のおよそ半分が、AIを始めとするツールに移行されることです。

 

 特に、情報の量は2020年には7億倍( 西暦約2000年までの4万年間で蓄積された地球全体の情報の量の*調査会社であるIDCによる調査

に増え、当然のことながら玉石混交の膨大な情報に晒されるようになることから、

真に必要な情報は何か?を見抜く目が必須になってきます。

 

 加えて、ツールに取って代わられる仕事の反面、新たに創造する仕事が増え、

そこには新しくより専門的な技術や知識、能力が求められることになると思います。

 

 上記のような変化に備えるには、専門特化される技術・領域・機能のいずれかを極めるプロとしての能力と、

玉石混交な情報の取捨選択をするための、純粋な目が必要となるものと思います。



【他者の違いを受け容れるには、自分を磨く】

 上記のような変化に対応するためには、想像を超える様々な知識・技術・能力が必要となり、

最早、すべての領域での自前主義や単独での進化は現実的ではなくなり、

これまで以上に機能横断的な取り組みや、国や地域を超えた企業間の共同開発、産官学の連携などが加速度的に増えることになるでしょう。

 

 つまり、個人の技はしっかり身につけるが、他者に興味・関心を持ち、受け容れるべき必要な異才をしっかり目利きできる能力開発が

必須となるものと思います。他者の異能を理解するためには、自らが深い知識・技術・経験を持っている必要があり、それ故に他者の能力

に対する無知の知を活かすことでピュアに判断することができるのです。

 

 今後の人材はプロの能力を持ちつつ、多様性を受け容れるピュアな視点を持つという一見背反するような能力が必要なのだと考えます。



金杉リチャード康弘

利他主義の実践について

利他主義の実践について」

 トランプ政権発足後、矢継ぎ早に大統領令が発令された。メキシコとの国境への壁建設、オバマケアの見直し、

TPPからの離脱、中東・北アフリカ7カ国の合衆国への入国制限など読者諸氏はすでにご存知の措置です。

 

 これら一連の流れは、自国優先の内向きの方向で、オバマ政権下のアメリカ合衆国の方向性とは

明らかに異なった考え方であり、欧州の右傾化と同様に加速しているように見えます。

 この動きは、今の危機や問題の責任は他者(=他責)にあり、その元凶である他者を排除するという、

「排他的」な世界観と言えるでしょう。

 

 排他とは文字通り仲間以外の者すベてを退けて受け容れないことであり、変化が激しく情報が一瞬にして

世界を駆け巡る現代において、異なる視点や知恵、経験、技術を排除することは、新しいアイディアや

イノベーションは起こりにくく、中長期的な結果としては閉塞感に繋がることは想像に難くないのではないでしょうか。

 

 今日は、他者を排除するという考え方ではなく、他者を受け容れる、さらに一歩進んで他者のために考え、行動する

「利他」について考えてみたいと思います。

 

【利他を重んじる教育】

 皆さんは、本日のテーマである「利他」を掲げて教育を行っている教育機関が日本にあるのをご存知でしょうか? 

 先日、APU(立命館アジア太平洋大学)の応援団のキックオフ&新年会に参加させていただきました。

総勢70名くらいの参加者だったと思いますが、半分がAPUのOB、残りの半分がAPUを応援する社会人で、

APUをもっと知ってもらうために何ができるか?をディスカッションする場でした。

 

 冒頭、横山副学長よりご挨拶があり、その中でAPUの理念として以下のようなメッセージをいただきました。

“異なる文化と価値観の違いを認めて理解し合い、自由で平和な世界を築く「世界市民」を育成する。

これが、APUの目指す「自由・平和・ヒューマニティ」「国際相互理解」「アジア太平洋の未来創造」である。”

(概要を咀嚼して記載)

 

 この中で、副学長が上記を実現する上で重要な要素として強調されておられたキーワードが、「利他」でした。

利他を辞書で調べると以下のような解説になります(大辞林)。

 1 他人に利益となるように図ること。自分のことよりも他人の幸福を願うこと。

 2 仏語。人々に功徳・利益 (りやく) を施して救済すること。特に、阿弥陀仏の救いの働きをいう。

 

 参加者はこの考え方を活用し、今の自分自身の利益とは直接関係がない、「現役の学生がいかにしてもっと成長

できるようにカリキュラムを進化できるか?」を、あるいは「これから入学を希望する人たちが、この素晴らしい環境を

いかにしてもっと知ってもらえるか?」を、利他の精神で議論しました。

 

 APU関係者の皆さん、OBの皆さん、そして私も含め応援団の皆さん、更には議論を通じて地元である別府の皆さんも、

とてもAPUを愛しておられることがひしひしと伝わり、APUの理念をいかにして、浸透、実践、進化させることが出来るか?

を真剣に議論する非常に刺激的な良い場でした。

(APUについてご興味のある向きは、こちらを参照されたい。http://www.apu.ac.jp/home/about/

 

 

【情けは人のためならず】

 日本の有名な諺ですが、改めて意味を調べてみると、“人に親切にすれば、その相手のためになるだけでなく、

やがてはよい報いとなって自分にもどってくる、ということ。誤って、親切にするのはその人のためにならない

の意に用いることがある。”(以上、大辞林より)

 

 諺の通り、まず他人のことを親身になって考え、相手のためになることに知恵を絞り、行動すれば

新たな視点や発想を持つことができ、知識や経験が増え、志を同じくする仲間が増え、異なる能力・発想・経験に

出会うことにより、自分一人では達成できない素晴らしい成果を味わうことで気がついて見ると、関わった全員が

大きく成長することになる。まさに「情けは人のためならず」ですね。

 

 しかし、皮肉なことですが、最近のアメリカや、欧州の傾向は、どうも諺の誤った解釈

(=親切にするのはその人のためにならない)、更には「自国の利益にならない」になっているように見えますね。



【Pay it forward(=受けた恩を次に渡す)の発想】

 2000年にアメリカで制作された映画のタイトルですが、内容は11才の少年トレバーが、社会科の授業で

「今日から世界を変えてみよう」という課題を出されます。

 トレバーが考え付いた奇想天外なアイデアは、人から受けた厚意をその相手に対して

恩返し=“ペイ・バック”すると当事者間のみで完結して終わってしまうと考えます。

 

 他の誰かに違う形で先贈りして善意を広げていく=“ペイ・フォワード”、すなわち、

この“厚意”を受けた相手に返すのではなくて、次の人に別な形で『渡して』みたらと考え、1人が他の3人に善行をし、

それが幾何級数的に増えるという発想です。まさに「利他」を地で行った発想です。

 結末は予想とは異なるものですが、トレバー少年のアイディアは世の人たちを動かします。

 

 もちろん映画と現実は異なるかもしれませんが、天台宗の開祖、最澄の名言にも

”一燈照隅 万燈照国”(=一人ひとりが自分の身近の一隅を照らす。それだけでは小さいあかりかもしれないが、

その一隅を照らす人が増えていき、万のあかりとなれば、国全体を照らすことが出来る)というものがあります。

 

 筆者が本日のテーマで申し上げたいことは、APUの例しかり、映画の例もしかりで、利他主義はボランティア精神ではなく

本気で実践すれば世界を動かす原動力と成り得るということです。

ただし、信じること、疑わず継続することが重要だと思います。

 

人間関係の基礎は信頼関係であり、信頼とは他者に期待するのではなく自ら相手を信頼することで、

相手の信頼を得るものですね。

今日から出来る「利他」をペイ・フォワードしてみませんか。

 

金杉リチャード康弘