ダイバースリーダーシップ推進協会 ブログ

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“組織の「遠心力」と「向心力」マネジメント” 目詰まりのない組織 #10 ~ アフターコロナも輝く組織でいるために ~

「アフターコロナも輝く組織でいるために」

 このテーマを狙いとし、組織に存在する様々な目詰まり解消を目的に始まったこのメルマガシリーズも初号から約1年がたった。

 スタート当時は、東京オリンピックの閉幕まもなくというタイミングで、世の中のモードも「さぁ、アフターコロナへ」と、切り替わり始めたタイミングだったように記憶している。

 

 その後も感染の波は繰り返されているものの、出社や出張、プライベートの旅行も戻りつつあり、感染時の外出規制や国としての管理(把握)レベルも見直された。

 コロナを意識した行動や影響はまだあるものの、少なくともビジネスにおいては、判断の優先順位が経済活動へと切り替わり、「アフターコロナ」に完全に移行したと言っても過言ではないだろう。

 

 定義すら定まりきらなかったDXも、一気に検討が進み、いたるところで具体的な取り組みとして発現しはじめた。まさにこれからが本番。

 より輝きを増す組織と、輝きを失う(もしくは取り戻せない)組織とが、明確に分かれることになるだろう。

 

 コロナによってもたらされたビジネスの急速な前提変化という大波・大風をいかに活用できるか(乗り越えたのでは足りない)、より具体的な活動として実現できるかという勝負のタイミングになっている。

 

 このメルマガシリーズも、本号からは事業創造や成長を支える具体の機能、身体で言えば、手や足といった部位の目詰まりに触れていく。

 

 組織を実際に動かすのはマネジメントであり、身体で言えば「手」に相当するであろう。

 この「手」、すなわちマネジメントの目詰まりについて前後編(本号では全般論を取り上げ、次号ではもう片方の手として、人材マネジメント(組織を動かすとは、とどのつまり、人材を動かすことである)へと踏み込み、2本の手=「両手」の構成で論を進めていく。

 

 すでに述べたことだが、従業員の意識や考え方、そして働き方も多様化している。

 事業や成果を生み出すためには、必要な情報も広く集め、多様な思考で解を仮説し、高速にPDCAを回すことが求められるようになった。

 

 つまり、組織には遠心力のベクトル(数と大きさ)が一気に増え、同時に、事業成果創出には向心力(すなわち強い連帯)が求められている。

 この相反する力の制御が、今まで以上に難しく重要で、それをいかに実現できるかが、これからのマネジメントに求められる特徴である。

 

 

 

【従業員への提供価値は、確定給付から確定拠出へ】

 リモートワークが市民権を確立した。

 それに伴い、働くために従業員が我慢しなければいけないことが減りつつある。

 働く時間や場所を会社・チームで同期させることが前提ではなくなりつつあり、何を基準にどのように働く時間と場所を決めるかの自由度は、大きく増している。

 

 そう、働く目的や位置づけ、会社に所属することの意味、そこからくる会社や仕事に求めることを、もっと自由に、自分自身のありたい様に設定できるようになった。

 従業員は、それらを押し殺して、我慢して働く必要はかなり薄れた。

 

 これまで企業は、従業員・応募者に対して、

 「成長できます」、「頑張れば昇給します」、「若いうちからチャレンジできます」・・・おおよそこれらを実現できる事として約束してきた。

 

 その代わりに、「あれはダメ」、「これをしろ」と、様々な要求・制約を課した。

 分かり易くいえば、“従属すれば保護”していた。

 しかしながら、求めるものが多様化した現在において、そのような考え方、ステレオタイプの条件提示では、遠心力を抑えきれなくなっている。

 

 そこで、これからのマネジメントとして求められるのは、様々な機会の提示と求めるコミットの限定(成果・貢献さえあげれば働く場所、時間の自由など)である。

 

 具体的には、

 それぞれの従業員が何を望んでいるのか?

 その実現のために必要な機会とは何か?

 それは会社としてマネジメントである自分自身として提供できるのか?

 を考え、従業員それぞれが仕事を通じて実現したいことがチャレンジできるよう“支援”することが期待役割となる。

 

 さらには、組織として必要な工数充足も、これら価値観の違いによるパフォーマンスへの影響も踏まえて行わなくてはならない。

 例えるならば、確定給付的な提供価値ではなく、確定拠出的な内容へのシフトが必要となる。

 簡単そうだが、実はこれが難しい。

 

 マネジメントを担う方々は、当然、事業や組織を成長させるという成果を期待されている。

 そして、今日に至るまで、当然のようにそれを受け入れ、結果をだしてきた/出せてきた。

 

 これからのマネジメントが優先すべき「モノやコト」と、これまで自分が当然そうであると思い込んでいる「モノやコト」と異なる優先順位を受け入れるには、相応に強い心が求められる。

 組織として共通の目的が共有できていても、その優先順位が異なり、働く目的の異なる人々の集団をマネージすることは想像よりも遥かに難しい。

 

 少し、話がずれるが、最近の「パーパス経営」も、この1つの現れと筆者は思う。

 これまで企業のバリューは、二人称で語られることが多かった。

 更に進んで、SDGsなど、広く社会への貢献を約束する、すなわち三人称でバリューを定義することは、昨今の地球環境も踏まえた「公益性」というこれまでにない価値を求める従業員に応える。

 といった側面もあるのではないかと考える。

 

 

【自立、貢献に対する厳しさ

 ここまでの内容で、会社に求めるものの自由度が増せば、それに応えるためにマネジメントコストが増加することはお分かり頂けただろう。

 しかし、このコスト増を受け入れるには、当然ながら、従業員がそれに見合う自立的貢献を行うことが前提となる。

 

 つまり、自由度は増すが、自立的貢献ができない従業員には、今まで以上に厳格に対応せねばならない。

 自由と責任、権利と義務、それらは同じ大きさであり、できないのであれば自由の制限や処遇の適正化を行う、それでもダメなら雇用の継続そのものも検討せねばならない。こういう厳しさも増すのである。

 

 上記はある意味最終的な対応であるが、このような状況を指摘し、警告し、改善を促す“強いマネジメント”が求められる瞬間は増える。

 その時に、本来求めるべきROIではなく、従業員との関係を悪くするのではないか、辞められては困るといった工数充足の観点を優先し、なまぬるい対応をとっていたのではマネジメントは失格である。

 支援とともに、このような厳しい、強いマネジメントをしっかりやっていくことが、自由度が高まった環境下でのマネジメントには求められる。

 

 遠心力の多様化・増大への対応についてのメカニズムについては、ご理解頂けたと思うが、提供価値の確定拠出とその実現のための支援により向心力は向上するが、ROI的には、前述の通りコスト増で割に合わない。

 

 成果を大きくするためのマネジメントの変化が必要となる。

 具体的には、成果増大のためにどの目詰まりを解消すべきか?という点で、各号にて触れている。

 よってここでは具体には触れないが、チームであることを従業員が感じ、自分の意見を述べ、相互連携・支援し業務に取り組むプロセスと、その実現に必要なITシステムやルールを体系的に整える必要があることはいうまでもない。

 

 この多様化・自立化は、すこし俯瞰的に見ると、組織の質的変化の可能性が高まったとも言える。

 強く厳しいマネジメントが必要な時、支援を中心とした温かいマネジメントでよい時、率先垂範が必要な時、俯瞰と方向性の提示でよい時などなど、これまで様々な切り口でリーダーやマネジメントの型が定義されてきた。

 

 これからは、このどれに当てはまるか?ではなく、いまどのスタイルを適応すべきか?に型の使い方が変わってくる。

 複数の型を持ち、組織の状況と置かれた環境に応じて、使い分ける、そういった器用さが求められるのが、この組織・人材が多様化された世界なのである。

 

 次号では、この多様化された組織・人材をいかにマネージするか、それを実現するマネジメントとは?更にはリーダーとしてDLAが定義した“ダイバースリーダー”を通じて人材マネジメントについて論を展開したい。

 

 

 DLAでは、多様化された組織におけるマネジメントシステムの確立に向け、ルール・人・業務(ITシステム)すべての領域について体系的に整備・運用するご支援を行っています。

 輝く組織に向けて、何をどう整備すればよいのか?整備したが思うように動いていないといった課題をお持ちの皆様、是非ご相談ください。

 

T.Y

 

 

 

 

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“DXの実現。新事業創造を阻む、現場の目詰まり” 目詰まりのない組織 #9(下) ~ アフターコロナも輝く組織でいるために ~

【現場の目詰まり〜後編〜】 

 顧客と対話を繰り返しながら事業を創っていくという新しい事業構築アプローチ、その意思決定の前提となる、事業構築アプローチの変化について、前号より上下2回に亘って取り上げさせていただいている。

 

 前号から引き続き、事業立上げ・確立こそが会社組織の存在意義であり、勝ち/価値を継続する要であるということから「腰」と捉え、その機能不全を「腰の目詰まり」として本号でも論を進める。

 

 これまで、テクノロジー(IT)の進化がビジネスモデルの可能性、新価値提創造・提供の可能性を格段に広げたことは述べてきた。

 しかしながら、業界をリードしてきた大手企業でさえ、ITをビジネスの根幹に据えた取り組みは行ってきておらず、それすなわちDXのコアコンピタンスを持ち得ていないと言う事である。

 したがって、そのためのリソースを外部から調達せざるを得ない。

 

 これまでの、外部“ITベンダー”の活用だけでなく、事業構築・戦略実行のイコールパートナーとして、必要な技術力をもったIT企業の活用が必須になっている。

 「IT統合力」(詳細は前号参照)を発揮し、それらIT企業、外部リソースをイコールパートナーとして取り組めるかどうかにかかっている。

 

 前号では、その実現には、

・企業の枠を超えた多様性の活用(目的の一致を前提とした、意思決定における意見の質重視)

・これまでの優秀者の意識・行動適応を助ける心理的安全性の確保

の課題に触れた。

 

 本号では、この一連の意識改革に続き、DXの本来の目的である、BX(ビジネストランスフォーメーション)の実現に向け、新事業創造の具体的な肝についてお伝えして行きたい。

 

【仕掛と製品。どこから品質は担保すべきか】

 エンジニアとのパートナーシップが確立でき、DX・BXが進む。

 次に問題になるのが、品質の考え方である。簡単に言うと「そんな品質のものを、市場に出せるか!」問題である。

 

 先に触れた、顧客とともにサービス・事業をつくるとは、大雑把に言うと、仕掛品レベルで市場に投入することである。

 最初はもちろんコンセプトレベルでの需要創造可能性調査からはじまるが、次のステップとしてはプロトタイプの投入となる。

 このプロトタイプで、UX(ユーザーエクスペリエンス)の確認を通じた具体的需要創造と、それを満たす追加機能・ユーザビリティ(使い勝手)の把握を行う。

 そのため、一定のユーザーにトライアルをお願いすることになるが、機能不足に加えて、品質トラブルも一定数発生する。

 

 この“まともではない製品”を市場に出すこと、ある種不具合がでることを前提にユーザーに利用いただき、不具合の把握・解消していくことに、抵抗をもつ企業・現場は非常に多い。

 

 ソフトウェアの場合、有償提供サービスとなっても、普及していく間ずっとこの状態(追加ニーズと不具合の継続的発生)が続く。

 この完成しない/していない製品の販売は、これまでのビジネスでは考えられないことであり、この品質レベルを許容できずに、残念ながら「こんなものは使えない」といってPoC(アイデアやコンセプトの実現可能性検証)のみで将来性のある新規事業が止まってしまったのを、筆者はたくさん見てきた。

 

 サービスや製品の市場投入が、一気に前倒しされるがゆえに、顧客(候補)とともに事業づくりを行うこの事業創造モデルを有効に回すためには、「完成品としてスタートする時点の定義」、「進化しつづけるサービス・製品における担保すべき品質の定義」を明確化させること。

 そういう新規事業モデルの“かたち”であることを前提に、品質の捉え方・考え方も最適化させる必要がある。

 

 

【サービス・製品進化のポイント。ニーズの優先順位付け】

 新事業創造プロセスにおいて品質問題と並行して大切になる視点として、ニーズの優先順位付けがある。

 

 新しいサービス・製品を創るにあたり、どういうものを作りたいのか? それはなぜ?  というコンセプトを明確にする。

 そして、このコンセプトに「たしかにそうだね」と共感してくれるユーザーが、新事業創造プロセスに加わってくれることになり、このサービス・製品が出来上がることが自分のためになる、と「自分ゴト化」する。

 

 このユーザーの有難い思いが、今度は、ニーズとしてフィードバックされるようになる。

 思いが強ければ強いほど、ニーズ・期待値も強くなる。

 

 ここで難しいのが、このニーズは、当該ユーザー個別のニーズなのか?或いは、市場を形成するカギとなる普遍的なニーズなのか?を冷静に判断することである。

 

 目の前のユーザーは自分事として、熱心にこうしてほしい、ああしてほしいとフィードバックをくれる。

 対面している担当者は「リアルな顧客の声として、これは必要だ」と、徐々に“企業側”から“ユーザー側の人”として製品開発チームに要請するようになる。

 目の前の顧客の強い要望を後回しにする、もしくは実装をお断りする(カスタマイズ開発になる)ことを伝えるのは、顧客担当者にとってはかなりのストレスであり、時に必要性を盛って依頼(妥当性の主張)してくることもある。

 この強い個別の声(お客様は神様的要望)に、製品開発チームは耐えねばならない。

 

 

 製品開発チームは、これらの声が、そもそも製品コンセプトとあっているのか?さらには市場を形成する多数のユーザーが望むニーズになり得るのかを冷静に判断し、実装優先順位を決める。

 ユーザー担当は、その結果、自らの担当顧客のニーズが他のニーズに劣後することに不満をもち、製品開発チームにプレッシャーを与え、そのユーザーもがっかりし、時に新事業創造メンバーから離脱してしまう。

 

 製品開発チームは、その状況に耐え、ブレることなく、市場観点での優先順位付けを行い続ける必要がある。

 この製品開発チームの強さの獲得と、ユーザー担当の行き過ぎた顧客志向を市場志向へと戻し、ユーザーコミュニケーションを続けさせるという2つの目詰まりの解消が求められる。

 

 尤も、多くの場合、先の神様の声は、現状の置き換えや課題解決であり、中長期では最終的に市場観点でのニーズを採用してBXを実現する事となる。

 

 

 このように、ウオーターフォール型のサービス・事業開発から、顧客対話型の市場創造並行型のサービス・製品開発へと、新規事業開発アプローチも広がり、多様化している。

 前号の意思決定だけでなく、それを推進する各機能・各担当も、変化を理解し、それぞれがやり方・臨み方を最適化する必要がある。

 

 構想は立ち、意思決定もされているのに、現場が動かない。PoCばかりで、なかなか前に進まない。

 というお悩みを抱える企業様は、是非、事業立上げのプロセスに目詰まりがないか検証いただきたい。

 

 

 これまで、本メルマガシリーズにおいて、頭や脳から心臓・血管、いわば身体のセンターラインに触れ、そして本号で腰に到達した。

 アフターコロナという新しい環境下で、いかに新しい事業を生み出し、成長を続けるかというところを、輝く組織であり続ける主軸として位置づけ、論を展開してきた。

 次号からは、この事業創造や成長を支える具体の機能、身体で言えば、手や足といった部位の目詰まりに触れていく。

 

 

 DLAでは、戦略の“実行”に焦点をあて、意識改革も含めたハンズオンで戦略実行支援を行っています。

 DX・BXの構想は立てるも、PoCからなかなか先に進まない、構想が具体化せず、新事業が生まれないといった点でお困りの企業様がいらっしゃれば、お気軽にご相談ください。

 

T.Y

 

 

 

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“DXの実現。新事業創造を阻む、現場の目詰まり” 目詰まりのない組織 #9(上) ~ アフターコロナも輝く組織でいるために ~

【新事業創造を阻む、現場の目詰まり】 

 前号では、企業の意思決定機能を「脳」に例え、大きく環境が変化しているにもかかわらず、旧来方式の意思決定プロセスのみを継続適応している状況を、「目詰まり」として指摘した。

 その背景として、テクノロジーの進化等により、過去にない新たな価値提供にチャレンジできるようになった反面、これまでと同じ提供価値の範囲内で競争をしていても、事業成長は限界があり、新しい価値で、新しい市場・需要喚起を行うことが必要になった事が挙げられる。

 

ユーザーも我々提供サイドも経験したことがない新価値。その価値とは何なのか?

 

 ゴールが見えない不確実な世界においては、確度予測に基づく意思決定は行えず、事業化シナリオに沿ったフェーズでの意思決定(フェーズドアプローチ)、すなわち、リスクをコントロールでき、好機に一気に攻め込める意思決定が必要になっていると述べた。

 

 それは、顧客とともに、顧客と対話を繰り返しながら事業を創っていくという新しい事業構築アプローチへの対応、最適化であることにも触れた。

 

 今号では、その意思決定の前提となる、事業構築アプローチの変化について、事業立上げ・確立こそが会社組織の存在意義であり、勝ち/価値を継続する要であるということから「腰」と捉え、上下2回に亘ってその機能不全を「腰の目詰まり」として取り上げさせていただく。

 

 先に述べた通り、時代の大きな変化の根本は“テクノロジー(IT)の進化と活用における統合力”=I T統合力(I T統合力は後述)にあるとDLAは考える(コロナは、その活用や浸透を加速させたが、変化の根幹ではない)。

 

 これは、これからの事業モデルのコアコンピタンスの1つは、進化したIT技術とその活用におけるリソースの統合力であることを意味し、そして、多くの企業は、それを持っていない。

 このコアとなるテクノロジーや能力を、これまでマーケットのリーダーであった企業ではなく、時にベンダーとして格下にみられていたIT企業や、創業数年(スタートアップ)のITベンチャーがもっている。この構図がまた難しくしている。

 

I T統合力とは】

 ここで言う「I T統合力」とは、これまでのI T(情報技術)の単なる導入=システム化 とは異なり、意思決定、運用段階、エンハンス等各フェーズに必要な要素を有機的に統合してI Tを整える能力である。

 

 “統合”は、データの統合(アナログとデジタル、重要ではあるが個別に管理されている各種情報、既存システムから新システムへの移行など)はもちろんの事、発注サイド(ITを利用するユーザー企業等、何をI T化すべきかを本質的に理解している側)と受注サイド(オーダーされた意図を理解し、トランスフォーメーションを実現するコンサル・ベンダー等)の統合。

 さらには眠っている社内リソース(経営、現場、専門家、ユーザーなど多様な知)の統合、各層およびトランスフォーメーションプロジェクトとしてのすべての層を対象とした統合的推進を意味している。

 

 

 

【体制と姿勢。コアコンピタンスの外部調達の難しさ】

 新価値創造の起点にITの進化があり、ITがビジネスモデルの可能性を格段に広げた。

 しかし、このITの進化をしっかり理解できていないにもかかわらず、多くの企業、特にこれまで業界をリードしてきた大手企業は、従来と同様に、新事業の構想を自分たちのみで描こうとしている。

 そして、それを実現する提案をIT企業に求める。

 

 そう、今までとまったく変わらない座組と姿勢でIT企業に接し・扱う。そして生まれるのは既存事業の延長にあるIT活用であり、全くトランスフォームが起こらない“名ばかりのDX”となっているのが実情だ。

 

 コアコンピタンスが進化したITにある以上、外部IT企業を自社のリソース(身体能力の一部)として統合する必要がある。

 言うことを聞かせる対象ではなく、今後のITの可能性を教えてもらい、創発により、事業展開する/しようとする産業での、ITの新しい活かし方を提供価値・ビジネスモデルとして描く。

 

 すなわち、“ベンダーシップ”から“パートナーシップ”へと臨む姿勢を変え、彼らの発想と技術をしっかり取り込むことが重要なのだ。

 実際、DXをうまく進めている企業は、社外のエンジニアリソース(広義)を非常にうまく取り込み、密に連携し、DXがBX(ビジネストランスフォーメーション)へと結びついている。

 

 ビジネスを支えるツールとしてのIT活用の時代から意識が抜け出せず、ベンダーマネジメントをしてしまう企業はいまだに多い。

 この意識が新規事業創造(アイデアの創出~構想策定)を阻害する大きな理由となっている。

 

 

 事業におけるITが占めるウェイトが増えており、近い将来、多くの企業がエンジニアを直接抱えるようになり、重要な意思決定、事業戦略策定、新規事業創造の場にコアメンバーとして加わるようにもなる。

 これまでの事業をリード・支えてきた社員とは、エンジニアの志向性・価値観は異なるケースが多い(少なくとも、異なるという前提で対応したほうが良い)。

 

 社員としてエンジニアを抱え、活かす時代に向けた準備としても、その移行期として、これからの外部エンジニアリソースのイコールパートナー(=外部専門家・リソースという、活用する外部の方から、場・時間・課題あらゆることを共有し解を出す内部コアメンバーへ)としての活かし方を学ぶべきである。

 

 

【イコールパートナーのための多様性と心理的安全性】

 一言でイコールパートナーと言っても実際にはそう簡単ではない。

 それを阻む2つの壁が存在し、それが真の意味での多様性と心理的安全性である。

 

 先に述べた通り、ベンダー的役割(機能)として見ていたエンジニアと、本当のパートナーとして並走するためには、これまでの関係性を自ら否定し、意識を変え同じ立場として協働しなくてはならない。

 すなわち、命令や指示が合意形成に変わり、発注・報告させる・検収というプロセスが協働に変わる。

 つまり、使うという発想・立場(ピンポイントでの関わりであり、遂行責任も委譲する)から、一緒に課題解決する意識(文字通り同じ船に乗る)改革が不可欠となる。

 

 1つ目の壁はDLAの基本概念であるシンメトリーが乗り越えるヒントとなる。

 すなわち、多数派が少数派を許容するという発想ではなく、個々の人々は全て同じ価値を持ち、それぞれが異なった個性を持っている、その違いに興味を持ち、受け容れることを楽しむこと。

 Symmetry(シンメトリー=異なるものどうしが等価)であることが重要となる。詳しくは第2号を参照されたい。

 

 2つ目の壁は前々号の心理的安全性だが、ここで問題なのが、誰の心理的安全か?という問いである。

 文脈からすると、エンジニアの心理的安全性が重要と考えがちだが、実は発注側の心理的安全性も同様かそれ以上に必要なのである。

 

 まだまだ多くの日本企業において、エースと呼ばれている人材は過去の実績やこれまでの評価軸において「優秀」と判定された人材であろう。

 繰り返し申し上げている通り、この前提自体が変わったため、エースが選ばれる基準も変える必要があり、そもそも少数のエースに会社の存亡を預けられるほど単純な状況では無くなった。

 

 運よくこの変化に気が付き、対応しようと考えた時、これまでエースとして認められていた人材は、「考え方を変えろ」、「ベンダーを使うのではなく、自ら協働せよ」と言われても、自らの過去の成功体験を否定する必要すら覚悟しなくてはならない。

 

 従って、これまでのエースが手柄を独り占めしなくても、失敗をしても、ベンダーだと思っていた人たちから、建設的な反対意見を公の場で言われても、安心して受け止められる「安全性」を会社として担保する必要があるのである。

 

 この一連の意識改革が達成できたら、いよいよ本番である。次号では、本号に続いて新事業創造の肝をお伝えして行きたい。

 

次号へ続く

 

 

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